第71話

そっけない🐹①
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2023/07/27 14:21
 ※いつもと違って文字ばっかりです
  読みにくかったらごめんなさい🙏









        そっけない











JIN side











しとしと、と雨が降りしきっている。










窓に当たるその粒の音を遮断するために、目を閉じて、本来聞きたい音に耳を澄ます。眠たいわけではない。

いつも彼女の声は刺激的で、僕にとっては一つも漏らすことなく聴きとめて、胸の中の宝箱にしまっておきたいぐらいに大事な音たちだ。

だけど今日は、生憎の雨な上に、運悪く窓際の席に座っているせいで、いつものボリュームの半分ぐらいしか聞こえてこないから、最悪だ。

当の本人は、そんなの全くつゆ知らず。
あぁ、梅雨つゆだからつゆ知らず。
僕ってばまた話が逸れてしまうじゃないか。
頭の回転が速すぎて、時々自分の気持ちを追い越してしまう。くそ。

当の本人は、僕のそんな最悪な気分なんて気づかない様子で、少し悦に入ったような声色で、弁を振るう。

あの薄いピンク色の唇の隙間から、彼女の大事な音たちが粒となって、教室の生徒が座る上空へと弾かれたように飛び出していく。

跳ね上がって、そのキラキラした粒をキャッチして回りたいぐらいに、僕の気持ちは踊っているけれど、それに反して僕はまだ目を閉じたまま、雨の音と戦っている。

あなた
この時代の女性たちは、男性を待つしかなかったってことね
あなた
自分から、男性へ想いを告げるなんて”はしたない”っていう考え方が普通だったの






批判めいた様子で彼女がそう言うと、ふぅと溜息を吐いた。

目を閉じていてもわかる。
彼女のその表情がどんなに美しいか。
いにしえの時代に思いを馳せて、彼女も僕と同じように目を閉じただろうか。

今日の彼女の瞼の色は、何色だっただろうか。

確認したくて、うっすらと目を開くと、予想に反して彼女の瞳は開いていた。
そして、呆れたような目で僕を見ていた。






あなた
ほんっと……またゲームで夜更かし?







今のは僕に言った言葉なのだろうか。

一度、二度、瞬きをしてみるけれど、やはりその視線はこちらへ向いていて、そして、一歩、二歩、歩みを進める。

まずい。

寝ていたわけではないし、むしろ熱心に聴いていたのに、それを、どう説明すれば理解ってもらえるか、その術が僕にはない。

口が渇いていく。

助けてくれ、誰か。

その願いも虚しく、彼女の室内履きの低めのヒールがコツンコツンと近づく音がする。






あなた
イケメンは寝てても許されると思ってる?








意地悪そうな顔をしたって、チャーミングなだけの彼女が、僕の席のすぐそばで立ち止まって僕を見下ろす。


好きです、先生。


見下ろす彼女の表情に、僕の心の中はその言葉で埋め尽くされる。


好きなんです、先生。











あなた
おーい、キム・ソクジン!目開けて寝てるの?
🐹
🐹
……金魚じゃありませんけどㅋㅋ




クスクスと教室内に、笑う声が聞こえる。
黙ってくれ。
聞こえなくなるじゃないか、彼女の綺麗な声が。




あなた
あれ?起きてるじゃん
🐹
🐹
…ずっと起きてましたよㅎ
あなた
あらそう?じゃあ…ここ、読んで


彼女の細い華奢な指が、僕の机の上の教科書に伸びてきて体を傾けた瞬間、耳にかけていた髪がはらりと落ちた。
そのごくわずかな音さえ、僕には大事な宝物になる。
きちんと、零れてしまわないように宝箱に鍵をかけてから、僕は立ち上がった。

立場が逆転して、今度は僕が見下ろす。

🐹
🐹
はい

示されたそこを、上擦らないようにゆっくり丁寧に読み上げ始めると、彼女が満足そうに頷いて僕の横を通り過ぎていく。

今度は僕の声を、きちんとあなたの宝箱に収めてほしい。

そう願いながら、早口にならないように、読み上げていく。雨の音に負けないように、大きな声で。







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