第21話

21
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2020/05/28 00:00
°


あなたside



38度4分…


どうしてこんなになるまで黙ってたんだろう?


ま、まさか気付かなかったの?



あなた(まさかね…)



海人「あなた、今日は遅いし俺たちで看病するよ」

あなた「ううん、大丈夫」
あなた「みんなお仕事あったから疲れてるでしょ」

玄樹「あなたも仕事してんじゃん」

あなた「いーのいーの、サービス残業」

神「泊まりで看病するなら一応一部屋空いてるからちゃんと休みなよ」

海人「もともとあなたのための部屋だしね」

あなた「うん、ありがとう」

岸「紫耀、大丈夫かな」

廉「疲れと色々考えすぎてたせいやな」

あなた(考えすぎてた…?悩み?)

神「じゃあ俺らは部屋に戻るね」

岸「ここで全員で看病すんのも邪魔だしな」

海人「……そうだね、じゃあ紫耀のことお願い」

あなた「うん、おやすみなさい」

廉海岸神玄「おやすみー」




みんなが出て行ったあと紫耀くんの顔を見ると
熱のせいで頬が赤く染まっていた


廉くんの物言いからすると
仕事も忙しいみたいだけど
やはり何か悩みがあるようだった



あなた「私じゃ力になれないかな………」



おでこに乗せていたタオルを交換しながら
1ヶ月前、彼に出会ったときのことを思い出した


彼はその時から

私を日向あなたとして接してくれた



あの日、別れ際に、彼が言った言葉を思い出す


「あと、『あの!』じゃなくて、『紫耀!』」
「じゃあまたね!あなた!」



偶々出会った女子大生でもなく、
ハウスキーパーの候補でもなく、


"私"として────────




私はというと、ついこの前まで彼のことを

"キラキラした世界の人"だと思っていた


ここまで関わりを持ってしまった今、

まるで一般人のエゴのよう




熱で魘されている彼はとても辛そうで、

いくら普段の彼が
潑剌とした少年のような笑顔を見せてくれても

ステージでキラキラ輝いていても

悩みも葛藤もあるだろうし、疲れれば病気にもなる、

生身の人間であることを実感した



なんて、こんなに普通のことなのに

どうして私は今にならないと気づかないのだろう




紫耀くんの力になりたいな────






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