第8話

溢れんばかりの感謝と愛を
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2023/08/12 09:49 更新
二階堂 綺
二階堂 綺
こ、これは……
──自分の気持ちが、誰もが納得する形で叶いますように。
私、二階堂 綺はこの光の願い事に対して、何かが動き出す、そう感じた。
それが私の気持ちであるのか、物質的な何かなのかはわからない。
ただ、率直にそう思った。
光の願い事は要約すると「願い事が叶いますように」だ。
実に光らしいと思う。
こういう天然なところが面白くてかわいい。

きっとストレートに書くこともできなかったのだろう。だからこうして一見わかりにくく書いているわけだ。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
ん?綺、どうかしたのか?
二階堂 綺
二階堂 綺
いや、なんでもない。
知り合いの短冊を見つけただけだ。
気にしないでくれ。
嘘はついていない。本当のことも言わないが。


光の願い事は、私にとって都合の良いように考えても良いのだろうか。

光の今までの態度を見ればさすがに気づく。
光は私のことを──。

















短冊をすべて回収し終えたタイミングで先生方がこちらにいらっしゃった。

笹の撤収を手伝っていただき、何とか七夕を終えることができた。

回収した短冊は、生徒会室前にダンボール箱に詰めて置いておく。
自分の短冊を持って帰りたいという人のためだ。
とはいえ、短冊を持って帰る人はほんの少ししかいないのだが。

まず短冊を学年・クラス順に並べないといけない。そのため、笹が片付いたからと帰るわけもなく、生徒会室で光と2人、作業をすることになった。
2人で分担し、短冊を分ける。

すると光が口を開いた。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
綺は副会長としての短冊しか書かなかったのか?
二階堂 綺
二階堂 綺
もちろん。回収するのがめんど……大変だからな。一枚でも減らせるようにと書かなかったんだ。
加えて、短冊に書くような願い事もなかったから書かなかったのだが、さすがに冷めすぎだろうか。
これを言ったら友人に引かれてしまった。
二階堂 綺
二階堂 綺
光はもう一枚書いたんだろう?
願い事は叶ったのか?
光の願い事を見たことは黙っておく。

私の問いに光が赤くなった。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
い、いや……まだ、だな。
すぐに叶うようなものを書いた訳ではないから。
思わずクスリと笑ってしまった。
二階堂 綺
二階堂 綺
そうか。叶うといいな。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
あ、ああ。……そうだな。
光の目に確かな色が宿った気がした。

まるで、何かを決意したかのように。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
あ、綺。
話が……あるんだ。
これはやばい。

直感的にそう思った。
何がやばいのかというと、


──告白される。まるで物語のように。
そういうのは絶対に私から言いたい。
何がなんでも。絶対に。

自意識過剰だと言われそうだが、実際そうなってしまいそうなのだ。仕方がない。
二階堂 綺
二階堂 綺
なんだ?光。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
い、いや、その……
心の中で、頑張れと思う気持ちとかわいいと思う気持ちがせめぎ合う。
かわいい。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
じ、実は……私は綺のことがっ──
私は言葉を紡いでいた光の唇に、自分の人差し指をあてた。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
……!?
二階堂 綺
二階堂 綺
その先は、私が言おうか
我ながらありふれたことを言っている自覚はある。

でも、なぜか胸の高鳴りが抑えられない。
二階堂 綺
二階堂 綺
光、私は光のことが好きになってしまった。
どうか、私と付き合ってほしい。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
えっ……
光のが揺れる。


そのうち、ゆるゆると揺れが激しくなって、

水が、落ちた。
二階堂 綺
二階堂 綺
ひかるー?大丈夫か〜?
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
ほ、本当……に?
本当、なのか……?
二階堂 綺
二階堂 綺
嘘なんてつかない。全部本当だ。
私は、光のことが好きで好きでたまらないんだ。
光が泣きだしてしまった。とてもかわいい。
私は光の背中をさする。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
う、うう……
二階堂 綺
二階堂 綺
そんなに私が嫌だったのか〜?
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
そんなことない!わ、私だって、
私だって綺のことが大好きなんだ!
その言葉に、胸が温かくなる。

光と同じ気持ちであることが、こんなにも嬉しいとは思わなかった。

嬉しくて、幸せでたまらない。
二階堂 綺
二階堂 綺
ありがとう、光。
私も大好きだ。
そう言って光を抱きしめると光は固まってしまった。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
あっ……綺……!
二階堂 綺
二階堂 綺
ん〜?別に良いだろう?
もう想いは通じてるのだから。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
そ、そうだが!
心の準備が……
そう言う光は涙なんて引っ込んでしまって、顔を真っ赤にしている。
二階堂 綺
二階堂 綺
で、私と付き合ってほしいという問いの答えは何だ?
まだ聞けてないぞ〜?
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
そ、そそそんなこと、良いに決まってるだろう!
よ、よろしくお願いします……
その言葉が、声が、すべて夢のようにふわふわと感じる。
これは、現実なのだ。もう隠さなくていい。
これからは面と向かって光に好きだと言える。

幸せすぎてどうにかなりそうだ。
私は再度、光に抱きついた。
光が後ろに倒れる。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
……まるで、あの時みたいだな……
二階堂 綺
二階堂 綺
私が光に床ドンした時のことか?
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
そ、そんなにストレートに言わないでくれ……!
何を今更恥ずかしがる必要があるのか。
めちゃくちゃかわいい。











短冊も詰め終わり、やっと帰ることができる。

7時には出るように言われた。校舎は部活動が終わる時間よりも早めに閉められてしまう。

とはいえ、今は6時であるからまだまだ残っていても平気なくらいだ。
二階堂 綺
二階堂 綺
一学期が終われば、もうここに来ることもないのか……
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
どうしたんだ?急に。
二階堂 綺
二階堂 綺
いや、別に〜?
ただ、感傷にひたってみただけだ。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
……そうか。
そうだな、寂しいが……すごく楽しい日々だった。終わるのは嫌だが、これからの日々が楽しみでもある。
二階堂 綺
二階堂 綺
それは嬉しいな。ありがとう。
私も、そう思うよ。
全校生徒のみんなは、ダンボール箱を通じて感謝を届けてくれた。そして、私たちに恋を教えてくれた。

今度は、私たちの番。
生徒会本部を引退するまで、全力でこの学校を、数ヶ丘を、みんなが大好きでいられるような学校にし続けよう。


これは、世界一幸せな生徒会長と副会長が、恋を知ったお話である。
この続きは、2人で紡いでいこう。

ありがとう。そして、心からの愛を。
貴方に──。

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