──自分の気持ちが、誰もが納得する形で叶いますように。
私、二階堂 綺はこの光の願い事に対して、何かが動き出す、そう感じた。
それが私の気持ちであるのか、物質的な何かなのかはわからない。
ただ、率直にそう思った。
光の願い事は要約すると「願い事が叶いますように」だ。
実に光らしいと思う。
こういう天然なところが面白くてかわいい。
きっとストレートに書くこともできなかったのだろう。だからこうして一見わかりにくく書いているわけだ。
嘘はついていない。本当のことも言わないが。
光の願い事は、私にとって都合の良いように考えても良いのだろうか。
光の今までの態度を見ればさすがに気づく。
光は私のことを──。
短冊をすべて回収し終えたタイミングで先生方がこちらにいらっしゃった。
笹の撤収を手伝っていただき、何とか七夕を終えることができた。
回収した短冊は、生徒会室前にダンボール箱に詰めて置いておく。
自分の短冊を持って帰りたいという人のためだ。
とはいえ、短冊を持って帰る人はほんの少ししかいないのだが。
まず短冊を学年・クラス順に並べないといけない。そのため、笹が片付いたからと帰るわけもなく、生徒会室で光と2人、作業をすることになった。
2人で分担し、短冊を分ける。
すると光が口を開いた。
加えて、短冊に書くような願い事もなかったから書かなかったのだが、さすがに冷めすぎだろうか。
これを言ったら友人に引かれてしまった。
光の願い事を見たことは黙っておく。
私の問いに光が赤くなった。
思わずクスリと笑ってしまった。
光の目に確かな色が宿った気がした。
まるで、何かを決意したかのように。
これはやばい。
直感的にそう思った。
何がやばいのかというと、
──告白される。まるで物語のように。
そういうのは絶対に私から言いたい。
何がなんでも。絶対に。
自意識過剰だと言われそうだが、実際そうなってしまいそうなのだ。仕方がない。
心の中で、頑張れと思う気持ちとかわいいと思う気持ちがせめぎ合う。
かわいい。
私は言葉を紡いでいた光の唇に、自分の人差し指をあてた。
我ながらありふれたことを言っている自覚はある。
でも、なぜか胸の高鳴りが抑えられない。
光の瞳が揺れる。
そのうち、ゆるゆると揺れが激しくなって、
水が、落ちた。
光が泣きだしてしまった。とてもかわいい。
私は光の背中をさする。
その言葉に、胸が温かくなる。
光と同じ気持ちであることが、こんなにも嬉しいとは思わなかった。
嬉しくて、幸せでたまらない。
そう言って光を抱きしめると光は固まってしまった。
そう言う光は涙なんて引っ込んでしまって、顔を真っ赤にしている。
その言葉が、声が、すべて夢のようにふわふわと感じる。
これは、現実なのだ。もう隠さなくていい。
これからは面と向かって光に好きだと言える。
幸せすぎてどうにかなりそうだ。
私は再度、光に抱きついた。
光が後ろに倒れる。
何を今更恥ずかしがる必要があるのか。
めちゃくちゃかわいい。
短冊も詰め終わり、やっと帰ることができる。
7時には出るように言われた。校舎は部活動が終わる時間よりも早めに閉められてしまう。
とはいえ、今は6時であるからまだまだ残っていても平気なくらいだ。
全校生徒のみんなは、ダンボール箱を通じて感謝を届けてくれた。そして、私たちに恋を教えてくれた。
今度は、私たちの番。
生徒会本部を引退するまで、全力でこの学校を、数ヶ丘を、みんなが大好きでいられるような学校にし続けよう。
これは、世界一幸せな生徒会長と副会長が、恋を知ったお話である。
この続きは、2人で紡いでいこう。
ありがとう。そして、心からの愛を。
貴方に──。

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!