1人になった部屋にも慣れ、新たな年を迎えた
まるで僕が生きられない年の始まりを祝う様に
目が覚めると、首元に彼岸花が咲いていた
馴染みのないそれがどうにも気持ち悪くて、力任せに根を切ろうとする
根が心臓に近いのか、心臓ごと引っ張る様な痛みを感じた
涙を溢しながらもなんとか切り、グシャグシャに潰してゴミ箱に捨てる
唯一赤いその花は、死の恐怖を具現化した様に見えたんだ
涙を拭い、もうあの世へ行ったみんなへ想いを馳せる
無性に1人の部屋が嫌になり、僕は彼岸花に背を向けた
ドアを閉め直し、今度はいむくんの部屋へ向かう
外から名前を呼ぶと、すぐに扉が開いた
いむくんと言葉を交わしたからか、彼が笑顔だったからか
僕はいつも通りに笑う事が出来ていた
元々諦めていたとはいえ、みんなが優しいから少し心配だったのだけれど
僕が死ぬ瞬間まで、今までと変わらず過ごしていけそうだ
まろちゃんが月の光で凍れてしまわない様にしてあった2人の部屋
ダンボールで覆われていた窓からは、明るい日差しが差し込んでいた
いむくんが言っているのは天使病の最期の事だろう
嫌だな、と彼はポツリと言った
天使になる事を望む発言ばかりしていたから、そんな言葉を聞いたのは初めてかも知れない
窓の外を眺めながら止まってしまった
羽を避けて周り、彼の顔を覗き込む
驚く様に見開いた瞳からは、涙が溢れていた
涙を拭いながら、いむくんは僕の顔を見た
どうしていいかわからなくてただ黙って優しい表情を作ろうとする
彼がこんな弱音を吐くのは初めてだった
天使病の症状、死を待ち望む様な発言の事なのだろう
死にたく無いという事すら許されなかったのか
口にしなかった考えを肯定するみたいに、いむくんは少し笑った
「多分」そう続けた様に聞こえたけど、彼は唇を噛み締めていた
初めて会った日より随分弱々しく、そして大きくなった翼が僕を包む
細くなった彼の身体はあまり暖かった
目を腫らしたいむくんは優しく言う
重たい羽を引きずる様に、彼はベッドへ身を預けた
それ眺めながら、僕はゆっくり口を開く
大切な人と会えなくなるのは怖い
きっと死んでも諦められないのだろうと僕は思う
ずっと、心の何処かで思っていたんだ
化け物な僕は、みんなと再開出来ないんじゃないかって
いむくんはベッドに立ち、僕を見下ろしたまま話し始めた
そう言いながら小指を差し出す彼を、空の光が明るく照らす
いむくんが言うなら大丈夫な様な気がした
それはきっと、彼が御伽話に見えたから
そして同時に、どうしようもない程人間だから
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!