第29話

第27話!
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2026/05/21 10:57 更新
あっと先輩達のからかいを振り切るようにして、ぷり先輩は私の手を引いたまま、賑やかな人混みの奥へと進んでいく。気がつくと、他のメンバーの姿は見えなくなっていた。
あなた
……あ、あの、先輩。みんなとはぐれちゃいましたけど、大丈夫ですか?
pr
あいつらが勝手についてこんのが悪いねん。……別に、ふたりで回ればええやろ
そっぽを向いたままの先輩の横顔は、屋台の明かりに照らされてほんのり赤い。
pr
ほら、お前なんか食べたいもんないん。……あ、あれ美味そうやん。食うか?
先輩が指差したのは、キラキラと光るりんご飴の屋台だった。
あなた
食べたいです!
私が目を輝かせると、先輩はふっと柔らかく微笑んで、すぐにふたつ買ってくれた。
pr
ほら、落とすなよ
あなた
ありがとうございます! ……ん、甘くて美味しい!
りんご飴を食べる私を、ぷり先輩は自分のりんご飴を片手に、ずっと優しい目で見つめている。
あなた
……な、なんですか? 私の顔に何か付いてますか?
pr
いや。美味そうに食うなぁ思って
そう言って、先輩は自由になった方の手で、私の頬についた薄い飴の破片を親指でそっと拭った。その指先が少しだけ長く肌に触れて、心臓がトクン、と大きく跳ねる。
pr
……行くぞ。あっちで花火上がるらしいから、特等席連れてったるわ
そう言うと、空いている方の手で私の手を繋いできた。繋いだ手のひらに、きゅっと少しだけ力がこもる。私も握り返した。
ぷり先輩に連れられてやってきたのは、花火大会のメイン会場から少し離れた、高台にある小さな公園だった。ここなら人混みを避けつつ、夜空に広がる大迫力の花火を特等席で見ることができる。
pr
……ここ、誰もおらんくてええやろ。あんな人混みだととても地獄やわ
先輩はそう言って、浴衣の袖を少しだけ捲り上げながらベンチに腰掛けた。その隣に、私も少し緊張しながら腰を下ろす。


 ──ヒュゥゥゥ、と夜空を切り裂くような音が響いた直後。

ドンッ!!!

お腹の底に響くような大音量とともに、夜空に巨大な大輪の金色の花火が弾けた。一瞬にして、静かだった公園が昼間のように明るく照らし出される。
あなた
わぁ……っ! すごい、綺麗……っ!
思わず立ち上がって夜空を見上げる私。

 けれど、次に打ち上がった鮮やかな紅色の花火の光の中で、ふと視線を感じて横を見ると──ぷり先輩は夜空ではなく、じっと私を見つめていた。光と影が交互に映し出される、先輩の整った横顔。いつもは悪戯っぽく笑うその瞳が、今は驚くほど真剣で、吸い込まれそうなほどに輝いている。
あなた
(……え?)
その瞬間、私の心臓が、花火の音よりも大きくドクンと跳ねた。

 花火の爆音に紛れて、胸の奥がぎゅうっと締め付けられるように苦しくなる。この不思議なドキドキの理由が、今の私にはまだ分からない。これは、花火による感情なのか、それとも、目の前にいるぷり先輩に対する別の感情なのか──。
pr
……あなたのニックネーム
大音量の中でも、先輩が私の名前を呼ぶ声だけは、はっきりと鼓膜に届いた。花火の光に照らされた先輩の瞳から目が離せなくなって、私はただ、高鳴る鼓動を必死に隠すことしかできなかった。




見つめ合ったまま動けない私に、ぷり先輩はふっと我に返ったように目元を和らげた。けれど、すぐに自分の視線の熱さに気づいたのか、カッと顔を赤くしてガシガシと頭を掻く。
pr
……な、なんやねん。人の顔ばっか見おって。花火見ろや、花火
あなた
先輩こそ、私のこと見てたじゃないですか
小さく言い返すと、先輩はさらに焦ったようにそっぽを向いた。
pr
見てへんわ! 違う、お前の浴衣の帯がちょっと緩んどる気がしただけや!
嘘つけ、と言いたくなるような強引な言い訳。髪の隙間から覗く耳の先が、真っ赤に染まっている。
pr
……まぁ、その。……似合っとるんちゃう、それ
蚊の鳴くような声で、ぷり先輩が呟いた。いつもは「可愛い」なんて絶対に言ってくれない先輩からの、精一杯の褒め言葉。
あなた
……ありがとうございます
私が小さくお礼を言うと、先輩は繋いだままの手を、今度は少しだけ優しく握り直した。夜空には、途切れることなく大輪の花火が咲き乱れている。

 胸の奥でトクトクと暴れるこの鼓動の正体は、まだ分からない。けれど、火薬の匂いと夏の夜風に包まれながら、私は「もう少しだけ、このままでいたい」と、強く願わずにはいられなかった。


















次回に続く













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