第8話

追憶5 二人を繋ぐ熱
59
2026/07/17 06:06 更新



放課後の帰り道、夕暮れに染まる街並みはどこか非現実的で、私の目にはやはり色褪せて映っていた。


隣を歩く焦凍は、何度も私の様子を伺うように視線を落としてくる。


その瞳には、今にも崩れ去ってしまいそうな硝子細工を見るような、痛々しいほどの心配が滲んでいた。

焦凍
……大丈夫か。



焦凍が私の手首をそっと掴む。


その手はいつも、半分は冷たく、半分はひどく熱い。



言葉を返す気力すらなく、私はただ、小さく頷くことしかできなかった。




私の心はとうに限界を迎えていた。



燈矢を救えなかったあの日から、中身はすべて削ぎ落とされ、今はただ肉体という器だけが動いている。



そんなからっぽの私を支えるように、焦凍は私の体をそっと引き寄せた。



肩が触れ合い、彼の体温が伝わってくる。



お互いの肌が触れ合うその一瞬だけは、底なしの沼に沈んでいくような私の心に、かろうじてかすかな安心感が湧き上がった。




焦凍は、そんな私という存在のすべてに焦がれていた。



差し出された彼の愛は、狂おしいほどに純粋で、そして重い。



けれど、私の胸を満たすのは、彼への好意ではなかった。



あなた
(ごめんなさい、焦凍。)


脳裏にこびりついて離れないのは、圧倒的な罪悪感と、自分に対する果てしない嫌悪感だけだ。


燈矢くんを見殺しにした罪から逃げるために、私はこの優しい幼馴染を利用している。


彼の好意を都合のいい麻酔代わりに使い、彼自身の未来をも私の暗闇に巻き込んでいる。


私が生きている目的とは、一体何なのだろう。


私のせいで、焦凍を縛り付けてしまっているのではないか。


こんな泥のような私など、最初からいなかったことにして、彼はもっと眩しいヒーローの道を歩むべきなのだ。


あなた
焦凍。
焦凍
なんだ。
あなた
私のこと、忘れてもいいからね。




ぽつりと溢れた言葉に、焦凍は息を呑み、私の手を壊れ物を扱うように強く握り締めた。


その悲痛な表情を見つめながら、私はやはり、冷めた目で自分を見限っていた。



プリ小説オーディオドラマ