朝の光で満たされた保健室。
最初こそ消毒の匂いは鼻についたが、
今となっては落ち着く匂いへと変わっていた。
クルクルと回る先生用の椅子に座り足を揺らしていると、
静寂を切り開くように保健室の扉が開け放たれた。
普通に扉が外れてもおかしくない威力で
開けるのやめて頂きたい。
案の定、扉を開けたのはお兄ちゃんで
両手を広げながら私に走ってこようとしていた。
制服の襟を登馬くんに掴まれて広げた腕は無意味に終わった。
襟を正すお兄ちゃんを見て胃を抑えた挙句、
懐から取り出したガスクン10…胃薬を掌に無造作に出して口に放り込んでいる登馬くん。
胃薬ってそんなラムネ感覚で飲み込むものじゃないはずなんだけどな…
何やかんやで放送室に着いた。
放送を始めようとしていた時間よりも5分遅れ。
登馬くんの胃が心配だ。
初っ端から最悪だ。
総代としての威厳をこの放送で見せて欲しかったのだが…
そんなことお兄ちゃんにできるわけがなかった。
放送室の端っこで1人頭を抱えていると、
お兄ちゃんが大きく息を吸い込んだ。
さっきの脳に響くような大声から切り替えられて
静かな低音が学校中に響く。
静かにしていれば威圧感の漂う総代なのだ。
静かにしていればの話だが…
いつ終わるんだ、この放送は。
私が放送室に来た意味はあるのか。
そんなことどうでもいい。
早く終わらないと登馬くんが
激しい胃痛に襲われて倒れてしまう。
お兄ちゃんが淡々とそう告げると、
校舎の至る所から気合いの声が飛んで来た。
その大声に心を震わせていると
お兄ちゃんが満面の笑みを浮かべて振り向いた。
座っていた壊れかけのパイプ椅子から無理やり立たされ、
マイクの前まで強い力で押された。
登馬くんに助けを求めようと見てみると、
頭を抑えてそれどころじゃなかった。
私はもう喋るつもりはないという意志を示すように
壊れかけのパイプ椅子に再度腰を下ろした。
私の身勝手な意思表示にお兄ちゃんは全てを察したように
片眉を下げながら柔らかく微笑んだ。
焦り1割と怒り9割を含んだ声の登馬くんが
マイクの音を切るボタンを乱暴に押し込んだ。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。