第7話

7話
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2025/02/18 15:59 更新
青年は眉根を下げて笑いながら静かに謝った。
ぺいんと
ごめんなさい、お父さん。
その場にいた全員が驚いた。
治崎廻
( こいつ…)
一方ヒーローに抱かれた少女も混乱していた。

なぜそんな行動をとるのか…__本人からしてみれば、"当然のこと"であり最初からこうする算段だった。




"なにかを守るためにはなにかを切り捨てなくちゃいけない"




__それは青年の心に刻まれた言葉。

脱走したら殺されるだろう世話役には目をつむる、妹の心身を守るため倍の痛みを背負う、目的のため怖じ気づく自分を押し殺す。


必ずなにかを"犠牲"にしなければ成立しなかった。
治崎廻
なんだ…もう駄々は済んだのか?
何事も"代償"が必要なのだ、と学んでしまった。

ゆえに青年は
ぺいんと
うん…もうええ
__まず最初に"自分"を切り捨てた。
治崎廻
そうか、それはよかった
青年の"最優先事項"。
それは世界でたった一人の家族__"エリ"だ。
妹のためなら何でもするだろう、どんなことも厭わない。

そんなことはオーバーホールもすでに把握住みだった。__だが
治崎廻
( こいつは…”異常”だ。)
地獄のような生活、一度目の失敗から死に物狂いでようやく見つけた活路。


それを前に15歳の青年はそれらを捨てて易々と自身を差し出したのだ。


今の行動でオーバーホールは確信した。



__この青年はどこか壊れている。






エリよりもおれの方が"利用価値"が高い。おれがこっちへつけば手を引いてくれる可能性はあるはず。
エリちゃん
いやっ………!タッ
くるりと背を向けたときだった。
エリちゃん
お兄ちゃんっ…!トン
後ろからかるい衝撃。な…___
ぺいんと
エリ……!
なんで、なんでや…!!
ぎゅう、としがみつくその肩をつかむけど、目をかたく閉じて涙をこぼしながら首を横に振るばかり。

__なんで?どうやって来たんや。ヒーローたちは?
____
…っ、
なんで?


なんで、


どうしてたすけてくれないんや




ああ、この感覚___前にも味わったことのある感覚。


"また"、たすけてくれない。


気づけばもう手に力は入っていなかった。

____
え、あの…だるま?くん、エリ?ちゃん…?
治崎廻
いつもこうなんです、ご迷惑おかけしてすみません。ありがとうございました。
エリを抱っこする。
治崎廻
ではお仕事、頑張って。
____
待って…!!
また暗闇へと足を踏み入れた。






ペタ__ペタ__
玄野針
見つかったんですね。
冷たくて重い空気のなか、おれたちは戻ってきた。
治崎廻
ああ。よくやってくれるよ、このガキは。
エリはうつむいてた。
治崎廻
最近の若者は一段と病んでるな、クロノ風呂の用意しろ。あとは…
いつもの廊下、そしていつものおれたちの部屋へ向かおうとしたときだった。
向こうからおれが閉じ込めた世話役かこちらへ走ってきた。
ぺいんと
エリ、
エリちゃん
ん、
呼ぶとそれだけでエリはおれのやってほしいことを理解して耳を塞いで肩口に顔を埋める。
____
す…すんません若頭!!ちょっと目を離したスキにそのガキが逃げ出しやがって…
__バツン
壁一面に赤いべっとりしたものが飛び散る。
治崎廻
掃除もだ。
玄野針
へい
ぺいんと
その光景におれはただ目を伏せるだけ。
…もう見慣れてしまったのか、もう何も感じなくなったのかな、おれは。
治崎廻
だるま、
ぺいんと
エリ、先に部屋に入っていで
エリちゃん
え、でも…
部屋についてあの男はおれを呼ぶ。それより先にエリに部屋に入るようニコリと笑顔で言った。
治崎廻
だるま…もうわがままはよせよ、おまえたちは計画の"核"なんだ。
男は近づいてくる。
赤い瞳が不安げにこっちを見たけど部屋へ入っていった。
治崎廻
殊勝な心がけだな。
__バチンッッ!!
玄野針
、!
頬に激痛がはしったら体が簡単に壁へとばされた。
ぺいんと
ッぅ…
びりびりした感覚が頬を纏う。
治崎廻
教育の一環だ、次はこんなものじゃ済まないかもな。おまえも部屋に戻っておとなしくしていろ。…クロノ、行くぞ。
そのまま足音は遠ざかって静かな廊下におれだけが残った。

__……。
パンパン、と服についた埃を払って部屋の扉を開ける。
エリちゃん
エリはこっちを見ると驚いたみたいだった。
エリちゃん
ほっぺた…
ぺいんと
……大丈夫や、それより…
近づいてきたエリに目線を合わせるよう膝をついてしゃがんだ。
ぺいんと
なんであの時戻ってきたん?
エリちゃん
で…でも
ぺいんと
お兄ちゃん、お兄さんから離れるなっていったよな…!
エリちゃん
だって…!
珍しく声をあげた



エリちゃん
__だって…おにいちゃんを、置いていけないよ……。


呆然と、眉間を寄せて目を閉じ泣く少女を見つめる。

おれは…

__っおれは…!!
ぺいんと
っ…
そっと、その小さな体を腕の中に引き寄せて抱きしめた。
ぺいんと
( ごめんなぁ…)

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