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第6話

脚立の上の春
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2026/07/27 14:31 更新



sk
向井康二くん!君に決定!
佐久間が生徒会室で大きな声を上げたのは、放課後のことだった。
kj
え……僕、ですか?

康二は大きな丸メガネを押し上げながら、固まった。
学園祭実行委員の手伝い要員として、佐久間が直接指名してきたのだ。
sk
うんうん。地味かわいい系の君がいたら、装飾のセンスが上がる気がするんだよね〜。
あと、目黒くんも来るって言ってたし。

康二の頰が、わずかに赤くなる。
佐久間はそれを見逃さず、ニヤリと笑った。
sk
ふふっ。じゃあ、今夜から装飾作業ね。
よろしく〜!



夜の体育館。



照明を落とした広い空間に、提灯や造花、手作りの看板が並んでいた。

康二と目黒、そして佐久間の三人。
kj
目黒くん、ありがとう。わざわざサッカー部の練習後に来てくれて。

康二が小さく頭を下げる。
目黒は無言で頷き、提灯の紐を結ぶ作業を始めた。

二人の間に、わずかな沈黙が流れる。
佐久間がわざとらしく間に入ってきた。
sk
ねね、康二くん。目黒くんと仲いいんだ?
毎日卓球場に来てるって噂だよ?
kj
え……そ、そんなに毎日じゃないです……。

康二が慌てて否定すると、目黒が低い声で短く言った。
mm
来てるだろ。
kj
……うん。

康二が小さく呟くと、佐久間が楽しそうに目を細めた。
sk
ふ〜ん。
一年生同士で、もうそんなに親しいんだ。
いいねえ、青春だなあ!

探りを入れられながらも、作業は進んでいく。
康二は真面目に造花を並べ、目黒は黙々と高い場所の提灯を吊るしていた。







夜も更けた頃。

sk
康二くん、あそこの提灯、ちょっと曲がってるよ。
脚立使って直してくれる?

佐久間に言われ、康二は脚立に登った。
足元が少し不安定で、メガネがずれそうになる。
kj
……あ。

次の瞬間、康二の足が滑った。
体が後ろに傾き、バランスを崩す。
mm
危ない!

低い声と同時に、腕が強く腰を抱きすくめた。
目黒の胸に、康二の背中がぶつかる。

汗の匂いと、少し温かい体温。
kj
っ……!

康二は動けなくなった。
目黒の腕が、しっかりと自分の体を支えている。

心臓が、爆発しそうな音を立てていた。
mm
大丈夫か?

目黒の声が、耳元で低く響く。
康二は俯いたまま、かすれた声で答えた。
kj
……はい。ありがとうございます、目黒くん……。

二人の距離は、ほとんどゼロだった。



佐久間は少し離れた場所から、ニヤニヤしながらその光景を眺めていた。
sk
ふふっ。いいねえ……。

その夜、帰宅途中。



ラウールは康二と並んで歩いていた。
康二はまだ少し頰が赤い。
kj
……今日、目黒くんが脚立から落ちそうになった僕を、抱き止めてくれて。

康二がぽつりと話すと、ラウールの胸がぎゅっと締め付けられた。
ru
(抱き止めた……)

頭の中に、康二が誰かの腕の中にいる映像が浮かんで、苦しくなる。
ru
康二くん。

ラウールは足を止め、康二の方を向いた。

夜風が二人の間をすり抜ける。
ru
僕、康二くんのこと……。

言葉が、喉の奥まで出かかった。


好きだ。
ずっと好きだ。

中学の頃から、ずっと。


でも──
ru
(今、言ったら……康二くんが困るかもしれない)

ラウールは唇を噛み、寸前で言葉を飲み込んだ。
ru
……なんでもない。
今日は疲れたね。気をつけて帰って。

康二は不思議そうに首を傾げたが、優しく頷いた。
kj
うん。ラウールも、おやすみ。

二人の影が、街灯の下で長く伸びていた。

春の夜は、まだ少し肌寒かった。



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