トイレのドアを閉め、なつは1人ため息をついた。あんなに甘ったるい雰囲気の中で普通にいられるか、とらん達に対して文句を垂れる。今更ではあるが。
いるまとらんは両方想いである。その話は身内ではかなり有名な話だし、お互いにも薄々気づいている可能性がある。少なくともらんがいるまを意識し出だしたのはいるまの想いに気づいてしまったからだ。それくらいにいるまの態度はあからさまだった。
挙げてみればきりがない。いるまは、らんのことが本当に好きすぎる。あの自分のことにはとことん鈍感ならんでも気づいてしまうほどには、好き好きオーラが溢れ出ていることに気づいたほうが良い。その割に、らんの邪魔になるからと決して想いを伝えようとはしないいるまは、傍から見れば本当に焦れったいことこのうえない。
一生懸命に前を向いて努力を惜しまずに進み続けるらんの姿はなつも好きだ。なんなら、メンバーの全員が、そんならんだからこそついて行っているまである。だからそんならんを邪魔したくないいるまの気持ちは理解できてしまう。
それにしても焦れったいが。
ティッシュを渡され、らんが鼻をかんだ。急に鼻むず痒くなったのだが、誰か噂でもしているのだろうか。
らんの屈託のない笑みに思わず胸が高鳴りそうになるが、なんとか理性総出で抑える。しかし、頼りにされている事実に高揚するいるまは、多少なりと顔を綻ばせており、かなりわかりやすい。心なしかハートを飛ばしているように見えるのは気のせいだろうか。
若干悟りの境地に入りつつも、らんはいるまの表情を微笑ましく思いつつ一口お茶を飲んだ。
少し目を細めているまを見つめるらんは、内心2人が自分に何かを隠しているということは見抜いていた。自分の察しの良さがこの時ばかりは憎いと、少しだけ思う。何か事情があるのだとはわかるが、1人だけ省かれているみたいで少し傷つく。
内心ニヤニヤとしながら、らんは飲み物を口に含む。幸い、いるまはまださっきのらんの言葉で舞い上がってる最中だ。少し可哀想に思わなくもないが、先に仕掛けてきたのはいるま達なので、これでおあいこにしようではないか。
いるまがなんとも言えない顔で唇を噛み締めた。恐らくらんの言っていることを否定したいが、すべて事実なだけに何も言い返せないのだろう。
らんが満面の笑みでそう言うと、いるまは渋々といった様子で頷いた。しかし、その目はどこか寂しそうに、悲しそうに見えるせいで一気に罪悪感が襲ってくる。
視線が合わないいるまは心配だが、らんはトイレに閉じ込められたなつを救うために急ぐことにした。残されたいるまは、テーブルに突っ伏してため息をついた。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!