ジト目で見てくるらんに冗談だと肩をすくめてみせると、らんはやれやれとでも言うようにため息をついた。
乾いた笑みを浮かべるらんから洗いざらい事情を説明させたなつだが、だんだんとひどいめまいを感じるようになった。いるまも好きな人をいじめる小学生タイプだと思っていたが、らんも大概ではないだろうか。
勢いに任せて会話していたが、まさかの告白済みという新事実。驚きのあまりなつが大声を上げると、らんは恥ずかしそうに顔を手で覆って頷いた。なつの開きっぱなしの口と目は当分閉じれないかもしれない。
もう何もツッコみたくない。心底そう思いながら目線を地面に落とすと、玄関近くに光るバットが目についた。確か、記憶喪失の治療法に頭叩くやつとかなかったっけ。
そうと決まればあとは実行あるのみ。なつはズンズンと玄関先まで歩いていくと、らんの困惑した声を無視してその金属バットを手に装備した。
正直どっちもどっちであるとツッコんでくれるツッコミ要員は残念ながらここにはいない。そもそも普段はこの2人がツッコミ要員なのだ。その2人がこの有り様では、ツッコミ不在のカオス空間が爆誕するのも仕方がない。
だが次の瞬間、まるでこの場を収めるようになつのスマホから通知音がなった。それに双方ピタッと言い争いをやめる。
生返事をらんに返しながら通知を見ると、いるまからのメッセージだった。不思議に思いながらトーク画面を開ければ、内容は簡潔に『縮んだ』の一言。瞬間、弾かれたようになつは駆け出すと、リビングのドアを開けかけていたらんの腕を掴む。ドアの隙間からは服に埋もれた小さな塊がもぞもぞ動いているのが見えた。
おちゃらけた調子でそう言えば、らんは「まさか」と苦笑いを浮かべながら自室の方へ向かった。
ひとまず安堵の息を吐き、なつはリビングに入る。
からかい口調のなつの声に反応してソファの背後から這い出て来たのは、随分と幼くなったいるま。鋭い目つきはそのままに、ふくよかな頬を膨らませたその姿は何とも愛らしい。しかし、それにしても…。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!