目の前で、領域が崩壊した
全く考慮していなかったわけではない
勿論、何度も考えた
全く同じ領域術で、俺の領域を破壊される可能性
でも、殆ど無いと思っていた
狙わない限り、タイミングが合わないからだ
発動から時間が経過するほど、領域はより強固になる
そうなると、領域を破壊するのは難しくなる
領域の破壊が可能な段階で
赤炎が到着するとは思わなかった
…………詰めが甘いって言われる理由、これだよな
ここは、赤炎の相手をするほうが得策か………?
だとしたら、水癸はどうする?
赤炎の相手をしてる間に逃げられるだろ
2人がかりで俺を潰しにくるわけない
俺の相手をするだけなら、1人で十分だ
ちげぇわ馬鹿、そっちのほうが都合がいいんだよ
他者の能力を模倣できて、おまけに妖力が底無し
そんなお前の相手をするんだから
他に邪魔者がいないほうがいいだろ
こっちは命懸けてんだ
勝てる可能性がより高いほうを選ぶに決まってんだろ
脳内で呼び掛ける
すると、” アイツら ” はすぐに集まった
元々は、紫苑を探すために作り出したけど
もう紫苑は見つかったし、必要なくなったんだよな
まぁ、俺も分身体も
” 時間稼ぎの道具 ” でしかないからな
そこまでガチで殺り合う必要はないだろ
そう言って、水癸は離れていった
勝てる保証とか、正直言って全く無いけど
でも、それでいい
…………俺は、死んでも構わない
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!