司先輩を抱えながら、次の日に朝に城に帰り、咲希さんにそのことを報告した。
咲希さんは、涙を流しながら喜んでいた。
だが、久しぶりに会った司先輩は、大きく変わっていた。
前は元気で明るかったのに、今は目の光を無くし、静かに震えている。
さらに、黒の国に連れて行かれるまでの記憶を無くしてしまったようだ。
腰を低くし、司先輩と目を合わせる。
ボーッとした目で見つめ返してくる司先輩を見ると、どうしようもなく胸が痛む。
目が見えていないのか……早く病院に行きたい。
だが、すぐに行くと司先輩の負担が増えてしまうので、明後日くらいに行こうと思う。
このあとは会議がある。
会議の間、司先輩は1人になってしまう。
それを避けたいが、どうしたらいいのか。
優しく手を引けば司先輩はゆっくりと立ち上がる。
手を繋いだまま、神代先輩の部屋に向かった。
コンコンと2回ノックすると、扉が開き、中から神代先輩が出てきた。
神代先輩は黒の国から来た魔術師で、主に武器作りをしている。
司先輩と同じ年だから、任せるにはピッタリだと思う。
握っていた手を離し、俺は神代先輩に司先輩を預ける。
礼を告げ、俺は会議室に向かった。
青柳くんから、黒の国から来た司くんを一時的に預かった。
数十分間司くんといると、彼について分かってきた。
まず、司くんは、何かしないと動かない。
例えば、呼ぶとか、命令するとか。
目は動くが、他は動かない。
黒の国は治安が悪いから、奴隷のような扱いを受けていたのかもしれない。
そして、司くんは黒の国からきたのに魔法を知らない。
魔法を使うと、驚きながら目を輝かせて見てくる。
魔法が好きなのかもしれない。
そう思った僕は、司くんに得意な魔法を見せた。
僕は魔法を使い、手から黄色い炎をだす。
すると、司くんが目を少し見開いた。
即興で作った物語に合わせて、炎の形を変えたり水を出したりする。
司くんは真顔だが、楽しかったというオーラが出ている。
なんで分かるんだ?と言いたげにこっちを見ている司くんは、どこか幼さを感じる。
司くんの口がわずかに動いた。
読唇術は身につけていないが、ありがとうと言っているような気がした。
その瞬間、部屋の扉がコンコンと2回ノックされる。
青柳くんが帰ってきたのか。
そういうと、扉がガチャと開いた。
冬弥くんに、僕が司くんを観察している時に書いた紙を渡した。
紙には、司くんの体の状態が書かれている。
魔法で体内を見ることができたが、酷すぎて途中で辞めてしまった。
司くんは、少しだけうなづいた。
それから、司先輩は神代先輩と仲を深めていった。
司先輩が寝ている間、神代先輩からもらった紙を見る。
【天馬司】
・片耳難聴
・失声症+喉が焼けている
・傷、焼け跡 多
・臓器に傷 有
・独眼
・骨が折れている場所数箇所 有
・右腕が義手(締め付けが緩く、脆い)
・左手の人差し指骨折
・体内に異物 有
・羸痩
・栄養失調
・鬱症(おそらく)
他にもあるだろうから、病院に行ってね。
内容は思ったより残酷なもので、司先輩が黒の国で何をされていたか、嫌なくらい分かった。
また、病院に行くのは、明日にしようと決めた。







![# 攻略対象より悪役に惚れました . [ 冬司ver ]](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/463Ienje96SMnaxqeg7tvIaFh9p1/cover/01K566339R5TNCGP01WCWNSK9G_resized_240x340.jpg)




編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。