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第1話

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2025/09/30 05:25 更新
謙杜side


ぱちっ。

目が覚める。背中に嫌な汗。荒い呼吸。

「……またか。」

最近、同じ夢を繰り返し見る。辛くて、苦しくて、目が覚めるたび胸の奥がえぐられるような夢。

時計は午前2時を回っていた。

時計の横の棚には屈託のない笑顔を見せる少女の写真。


……いや、遺影。

彼女は俺の恋人だった。
結婚を前提に付き合っていて、
心から大切に思っていた人。
癌で亡くなって、もう半年が過ぎようとしている。
周りは少しずつ立ち直っているけど、俺だけが置いていかれたまま。
毎晩夢に現れる彼女は、病院のベッドで泣いている。
ただそれだけの夢。だけど俺にとっては悪夢だった。
目が覚めれば、そこに彼女はいない。
今見ていたものは幻だと知らされる。
いっそ、永遠に夢の中に閉じ込められたい。
死んでしまおうか、そんな考えがふと浮かぶ。
だけど、それができない理由がある。


「みんな、だいすきー!」

俺の声で揺れる会場。たくさんの黄色い光。

俺はアイドル、なにわ男子。長尾謙杜だ。


ー楽屋ー

「はー、つかれた。」大吾が座り込む。
「めっちゃ盛り上がったなぁー!」和也が笑う。
横浜公演が終わり、すぐに次の新潟公演が待っている。気合を入れなければ。

頬を叩いてスマホを取り出し、エゴサする。

🔎「長尾謙杜」
👤「長尾くん最近元気ないよね」
👤「謙杜の顔疲れてた、心配すぎる」

心臓がひやりとする。隠せていると思っていたのに、ファンに見抜かれている。
しっかりしなきゃと思えば思うほど、
笑い方が分からなくなる。
メンバーに心配されるのも、
もううっとおしいと思うくらい。
ただ何も考えずにぼーっとする時間が増えていた。
そんなある日、足首に激痛が走った。
練習のしすぎかと氷で冷やしても治らない。
むしろどんどん痛みは強くなっていく。

【続きます🌟】

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