第十六話「膝の上の授業」
昼休み明け。まだざわつく教室。
孝宏は何を思ったか、すっと浩史の席に腰を下ろした。
浩史:「……おい孝宏、そこ俺の席だろ。」
孝宏:「いいじゃん。たまには俺がここ座ってやるよ。」
そう言って余裕の笑みを浮かべる孝宏。
浩史は呆れたようにため息をついたが、次の瞬間、孝宏がぽんぽんと自分の太ももを叩いた。
孝宏:「ほら、来いよ。」
浩史:「はぁ!?授業始まんだぞ!」
孝宏:「いいから。俺の弟だろ?遠慮すんな。」
周囲のクラスメイトが「え、何する気?」「また始まったぞ…」とざわつく中、浩史は観念したように孝宏の膝の上に腰を下ろした。
——そのまま授業が始まる。
先生:「……えーと、では教科書の〇ページを開いて——」
教壇の先生がふと視線を巡らせ、目を疑った。
そこには堂々と浩史を膝に抱えたまま、黒板を見つめる孝宏の姿。
先生:「……ちょっと待て、孝宏。お前、何をやってるんだ。」
孝宏:「授業、受けてます。」
先生:「浩史は!?」
浩史:「……受けてます。」
クラス中が笑いを堪えきれず、プッと吹き出す声があちこちから漏れた。
クラスメイト:「(小声で)やべぇ、孝宏たち最強すぎんだろ……」
クラスメイト:「あれは恥ずかしすぎる……」
孝宏は全く動じない。
腕を浩史の腰に回し、落ちないようにしっかり支えてやりながら、堂々と板書を写していく。
孝宏:「おい、浩史。ちゃんとノート取れよ。」
浩史:「……分かってるよ。」
けれど頬がじんわり赤い。
兄の体温と視線の多さに、妙に心臓が落ち着かない。
先生:「……もう好きにしろ。ただし、静かに授業は聞け!」
諦めたように chalk を鳴らす先生。
教室のあちこちから笑いが漏れたまま、授業は続いていった。
——その日、双子の兄弟はまたしてもクラスの話題を独占することになった。
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✨第十六話 完✨












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。