第10話

恋を超えて未来を見つめる夜
93
2025/09/26 12:10 更新
それは、あのキスから数日後のことだった。
あなたの下の名前は、ずっと心にしまっていた話しを、
ついに七海さんに伝える決意をしていた。
(なまえ)
あなた
話したいことが、あるんです。
休日の午後、人気のない静かなカフェ。
窓の外にゆっくりと季節が変わっていくのを見ながら、
私は深く息を吸い込んだ。
(なまえ)
あなた
……実は、来年、海外の芸術大学に進学したいと思ってるんです。
七海さんは驚くこともなく、ただ静かに頷いた。
七海ひろき
七海ひろき
そっか。……ちゃんと考えてたんだね。
(なまえ)
あなた
はい……でも、ずっと言えなかった。
だって、行ったら……しばらくは、七海さんと会えなくなるかもしれない。遠距離になるかもしれないって思ったら、怖くて……。
私は、テーブルの上で手をギュッと握りしめた。
(なまえ)
あなた
(七海さんと、こんなにも近づけたのに、
それを壊すような選択じゃないかって、何度も思った。)
だけど、次の瞬間、彼女の言葉がそっと落ちた。
七海ひろき
七海ひろき
夢、叶えてよ。
(なまえ)
あなた
……え?
七海ひろき
七海ひろき
あなたの下の名前があなたの下の名前であることを、私は一番に応援したい。あなたの下の名前の夢を諦めさせてまで隣にいてもらっても、私は嬉しくないよ。
……本当は寂しいよ?正直、めちゃくちゃ。でも、それでも……あなたの下の名前の人生の主役は、あなたの下の名前だから。
七海さんの声が震えてるのが分かった。
でも、それ以上に温かくて、強かった。
七海ひろき
七海ひろき
……私、待ってる。どこにいても、待ってるから。
だから、行っておいで。
気づけば、涙が頬を伝っていた。
(なまえ)
あなた
……そんなふうに言われたら、余計に離れたくなくなります。
彼女はそっと笑って、私の手を握り返した。
七海ひろき
七海ひろき
じゃあさ、ちゃんと約束しようか。
そう言って、彼女はポケットから、小さなリングチャームを取り出した。
指輪でも、ネックレスでもない。だけど、確かに形としての想いだった。
七海ひろき
七海ひろき
指輪みたいに見えるけど、これただのチャーム。
でも、意味はある。戻って来る場所の証。
これ、あなたの下の名前に預ける。
私は震える指先で、それを受け取った。
(なまえ)
あなた
……絶対、帰ってきます。
七海さんの隣に、胸を張って立てるように……なってみせます。
彼女は何も言わずに頷き、
そして唇を、そっと私のおでこに落とした。
優しくて、切なくて、でも確かに前を向く口づけだった。
遠距離が始まる前の短い時間を、ふたりはいつも以上に丁寧に過ごした。
一緒にご飯を作ったり、映画を観ながらくっついて眠ったり。
触れるたびに、もう会えないかもしれない怖さと、
必ずまた会えると信じる強さが交差していた。
そして、旅立ちの日、
空港の出発ゲート前で、七海さんが言った。
七海ひろき
七海ひろき
行っておいで。
でも忘れないで、私はずっとあなたの下の名前が帰ってくる場所でありたいと思ってるから。

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