それは、あのキスから数日後のことだった。
あなたの下の名前は、ずっと心にしまっていた話しを、
ついに七海さんに伝える決意をしていた。
休日の午後、人気のない静かなカフェ。
窓の外にゆっくりと季節が変わっていくのを見ながら、
私は深く息を吸い込んだ。
七海さんは驚くこともなく、ただ静かに頷いた。
私は、テーブルの上で手をギュッと握りしめた。
だけど、次の瞬間、彼女の言葉がそっと落ちた。
七海さんの声が震えてるのが分かった。
でも、それ以上に温かくて、強かった。
気づけば、涙が頬を伝っていた。
彼女はそっと笑って、私の手を握り返した。
そう言って、彼女はポケットから、小さなリングチャームを取り出した。
指輪でも、ネックレスでもない。だけど、確かに形としての想いだった。
私は震える指先で、それを受け取った。
彼女は何も言わずに頷き、
そして唇を、そっと私のおでこに落とした。
優しくて、切なくて、でも確かに前を向く口づけだった。
遠距離が始まる前の短い時間を、ふたりはいつも以上に丁寧に過ごした。
一緒にご飯を作ったり、映画を観ながらくっついて眠ったり。
触れるたびに、もう会えないかもしれない怖さと、
必ずまた会えると信じる強さが交差していた。
そして、旅立ちの日、
空港の出発ゲート前で、七海さんが言った。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。