第9話

強引ワンコのご招待
938
2024/06/09 12:28
主人公 side
あなた
じゃあ、私もう帰るね
JUNON
……うん、色々ありがとう
あのあと、
いつの間にか目を覚ましていたジュノンを病院へ連れて行き、
解熱剤を処方してもらい、顔色もだいぶ良くなったため、お暇することにした。
あなた
ちょっと良いよ、わざわざ見送りとか…
JUNON
んーん、俺が見送りたいの
ベッドから出て、玄関まで着いてきたジュノン。

心無しか、寂しそうな顔をしている…気がする。
風邪ひいてる時って不安になるもんね。
あなた
ジュノン、
JUNON
ん?
あなた
またなんかあったらすぐ電話してね?
JUNON
…………
そう言うと、ジュノンは嬉しそうな顔をしたあと、
私の腕を、グイッと引き寄せた。

そしてそのまま、
おでこに当たる、熱くて柔らかい唇。
あなた
っ、?!//
JUNON
…ありがとう、あなた…ほんとに…
あなた
、ちょ、なんでおでこ…?!//
JUNON
ごめんね、ほんとは口にしてあげたいけど……移しちゃうから
あなた
バカ!そういう意味じゃないから!!//
JUNON
ふふ、笑
突然のおでこへのキスには驚いたし
勘弁してくれ…の気持ちだけど、
いつもの飄々とした様子を見られて少し安心、かな。

ふにゃっとした笑顔で手を振るジュノンに
呆れた視線を返しながら、お大事に、と伝えて彼の家を出た。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



マンションのエントランスを出たところで
なんとなく顔を上げると、正面から歩いてくる男の子を見つけた。
あなた
………ソウタ?
SOTA
、!……あなた?
キャップを目深に被っていて、ハッキリと顔は分からなかったけれど、すぐにソウタだとわかった。
あなた
何してるのこんなとこで
SOTA
俺ん家なんだよなぁ、ここ笑
あなた
あ、そうか。笑
ジュノンとソウタが同じマンションに住んでるの、一瞬忘れてた。

時計をちらりと見ると、午後7時。

今日の彼らの撮影は夕方に終わる予定だったはずだから、普通に帰宅してきただけか。
SOTA
あなたは…
…もしかしてJにつきっきりだった?
あなた
うん、そう
SOTA
………そっか
SOTA
あいつどう?調子良くなった?
あなた
、あ、うん、朝より元気になったよ
SOTA
おお、良かった!
安心したように笑ったソウタ。

これは相当、心配してたんだな…。
あとで他のメンバーたちにも、連絡してあげよう。
あなた
じゃあ私、もう帰るから…
SOTA
、待って。…あのさ、
SOTA
ウチで一緒に飯食わねー?
あなた
………え?
予想外のお誘いに、思考が一瞬停止した。

……いやいやいや、まぁ一緒にご飯はわかるんだけど

今……"ウチで"って言った?
あなた
……や、普通に無理だよ
SOTA
なんで?
Jとはドライブとかしてんじゃん、
俺とは遊んでくれねーの?
あなた
いやいや…ドライブとウチにお邪魔するのは違うじゃん…
SOTA
でも、今だってJの家から出てきたじゃん
あなた
それは看病なんだからしょうがないでしょ!
……ていうか、
一応、私たち過去に一線超えた実績がある男と女なわけだし、
2人きりで家で…てのは、如何なものなのよ、ソウタくん。

と、心の中で思いつつ、
"意識してる"と揶揄われる未来しか見えないので口に出すのは辞めた。
SOTA
……どーしても来てくれねーの?
拗ねたような声を出すソウタ。

……またもや聞こえるような気がする、
"あの"悪魔の囁き。

恐る恐るソウタの顔を見ると、
思った通りの不敵な笑みを浮かべていた。
SOTA
来てくれねーなら……
あなた
ッ、あーもう!!わかったよ!!
両手を顔の横に上げて、降参のポーズを取った私。

そのまま連れていかれるかと思いきや、
何も言わずに私をじっと見つめているソウタ。
あなた
……なに?
SOTA
…俺と2人きりになんの、嫌?
その表情は、まるでこれから置いてけぼりにされるワンコのように寂しそうで。

不覚にもちょっと、可愛いな、なんて思ってしまった。
あなた
、や、嫌とかじゃなくて…その…
SOTA
………
あなた
……ソウタと2人が嫌とかじゃないよ。
あなた
でも、
…前のこともあるし、お酒はなしね?
SOTA
、!うん!!
ぱぁっと笑顔になったソウタ。
無邪気な様子に、拍子抜けしていると、
SOTA
じゃあ、行こうぜ!
手をぎゅっと握られた。

しかも、ただ握られただけじゃなくて
指を絡める…所謂、恋人繋ぎ、ってやつ。
あなた
っ、ちょっと……!//
SOTA
はは、まーいいじゃん。
あなた
良くないわ!//
そのままズンズン歩き出して、
エレベーターのボタンを押すソウタ。
SOTA
……あ、ちなみにさ、
到着したエレベーターに乗り込み、
扉がしまったあとも
手を振りほどこうと必死になっている私を見て、

彼はまたもや、不敵な笑みを浮かべた。
SOTA
…"酒はなし"の約束はしたけど、
"何もしない"って約束はしてねーから

囁くように、放たれたその言葉。
あなた
…………ッ、はぁ?!?!?!//
SOTA
狭いエレベーター内に響く私の声と、
楽しそうなソウタの笑い声。

……そんなん、有り……?
あなた
〜〜〜ッ、やっぱ帰る!!!!!!//
SOTA
冗談だって。ほら行くよ
軽快な音を立てて開いたエレベーターの扉から出て
私の手を引き、歩き出す彼。

振り解けない、力強い手。
相変わらず……読めないなぁ……。


……まぁ本来、私たちは
お酒の力が加わらなければ
"そういう"ことには絶対にならなかったはずの関係。

2人でご飯を食べるだけなら
何が起きるはずも、ないでしょう。


自分にそう言い聞かせて、抵抗を辞めると
彼は一瞬振り返って、柔らかく微笑んだ。









第9話、完

プリ小説オーディオドラマ