第8話

無自覚は怖いね
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2024/06/07 16:00
主人公 side
あなた
えっ、ジュノンが体調不良…?
朝、いつも通りに出勤すると
現場が騒然としていた。

理由を尋ねてみると、
スタッフさんからの予想外な回答に、
自分で思っているよりも大きな声が出た。
スタッフ
そうなんですよ〜。かなり体調悪そうなので、今日は他のメンバーの撮影だけ先にしてジュノンさんは後日に……
あなた
……あの、ジュノンは今どこにいますか?
スタッフ
控え室です。あなたさん良かったら、送って行ってあげてくれませんか?
あなた
了解しました!
最近はいつも、現場に私が到着すると
すぐに絡んできていたのに
今日は来ないから、何か変だと思った…。

急ぎ足で控え室に向かい、
扉を開けると、ソファに横たわっているジュノンを見つけた。
あなた
ジュノン!大丈夫…?
JUNON
、ん……あなた?おはよう……
いつも通り、ふにゃりとした顔で笑うジュノン。
その顔は普段よりも赤く染っていて。

これ、結構熱があるんじゃない…?
あなた
動ける?私と一緒に帰ろ
JUNON
、ゃ…俺、頑張れるよ…
あなた
頑張るって何を?
JUNON
撮影……やれるよ、
あなた
ばか!ダメだよ!
起き上がろうとするジュノンの額に自分の手を当ててみると、やっぱりかなり熱くて。

…こんな状態でも撮影をしようとするなんて…

普段、何も考えてなさそうなふりして
本当に真面目なんだから。
JUNON
……情けな……
あなた
情けなくないよ。大丈夫だから。
立てる?
ゆっくりと起き上がったジュノンの体を支えながら、
楽屋を出て歩いていると、
SOTA
ジュノン〜…大丈夫かよ…
RYUHEI
ジュノンくん……
RYOKI
ジュノン〜……
別室で待機していたメンバーたちが
心配そうにジュノンの様子を見に来た。
JUNON
…大丈夫…ごめん…
心配させまいと
いつも通りにヘラりと笑うジュノンの横顔に
少し胸が痛んだ。



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あなた
1回熱測ろっか、
JUNON
ん………うん、
ジュノンの家について、彼をベッドに寝かせたあと
お水と体温計を手渡した。

数分待っていると、ピピピ、と鳴る軽快な音。
あなた
あー……やっぱ結構熱高いね……
JUNON
ん……
あなた
もうちょっと落ち着いたら病院行こ
JUNON
………あなた、もう帰っていいよ
背中を向けながら、
ぶっきらぼうに言い放ったジュノン。

いつもだったら、
もうちょっとそばにいて〜とか甘えてきそうなのに。
あなた
……ジュノン、どうしたの?
JUNON
……あなたに移したら嫌だし、
これ以上情けないとこ見せたくない……
彼は普段、
なかなか人に弱音を吐いたりしない。
実はメンバーの中の誰よりも、自分に厳しい男の子。

だからこそ、
こういう時の甘え方が、下手くそなのだ。

いつも通りの大きな背中が、まるで小さな子供のように見える。
あなた
……帰らないよ。そばにいるから安心して。
JUNON
……いいの?
あなた
普段変なイタズラされるより100倍マシ
嫌味を込めてそう言うと、
ジュノンは赤い顔ではは、と笑った。
あなた
なんか欲しいものとかある?買ってくるよ
JUNON
んー………
ジュノンは目を閉じてしばらく考えると、
そっと私の手を握った。
あなた
……なに?
JUNON
何も要らない。……ここにいて?
あなた
、!
熱のせいで潤んだ瞳が、私の顔をじっと見つめる。

……元々、彼が色気のある顔立ちをしているのは理解していたけれど、
こう、まじまじと見ると……改めて、すごいな……。

…って、病人相手に私は何を考えているのか…
JUNON
…あなたの手、冷たくて気持ちいーね…
弱い力で握った私の手を、そのまま自分の頬へ持ってきてぴとっと当てるジュノン。

そしてそのまま、またふにゃりと笑う。

……あ、やばい。

なんか、

いつもより……
JUNON
…あなた…?どうしたの…?
あなた
……っなんでもないよ。ちょっと寝な、
JUNON
…寝てる間に帰ったりしない?
……さっきから、正直ジュノンが可愛すぎて
私の理性が飛びそうなんですけど……

……いや、飛ばないけどね。うん。

まさか熱を出した時のジュノンの攻撃力がこんなに高いとは…。
あなた
帰らないよ。良くなるまでずっといる。
JUNON
、ん…ありがとう…
そう言って目を閉じたジュノン。

しばらくすると、規則正しい寝息が聞こえてきた。
あなた
……っ、はー……//
抑えていた胸の鼓動が、限界を迎えたように
ドクドクと全身の熱を上げていく。

普段の妙に大人っぽい笑顔は、何を考えてるかわからなくて怖いけど、
あなた
無自覚はもっと怖いな…
静かな部屋の中には、彼の寝息と私の独り言だけが
小さく響いた。




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JUNON side
JUNON
、ん……
目が覚めると、一番最初に視界に入ったのは
見慣れた自分の家の天井。

…俺、撮影現場に行ったはずなのに、
なんで自分の家にいるんだっけ?

そう思って、隣に視線を移すと
ベッドの端で座ったまま寝ているあなたがいた。

……あぁ、そうだ。
俺、体調崩してあなたが家まで連れてきてくれたんだ。

声をかけようとした時、
手のひらの温もりに気づいた。
JUNON
手……ずっと握っててくれたんだ、
彼女を起こさないように、体勢を横向きに変えると、
気持ち良さそうな寝顔と距離が近くなる。

ほんの少し近づけば、
キスが出来ちゃうような、そんな距離。
JUNON
……寝顔………可愛いな、
あなた
……んん……
キス、したい。

でも、風邪移しちゃうかもしれないから…
JUNON
………ねぇ、あなた………
触れられないかわりに、

今まで言葉に出来なかった想いが、自然と溢れてくる。
JUNON
……好きだよ……
静かな部屋の中には、彼女の寝息と俺の独り言だけが
小さく響いた。








第8話、完

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