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アネットはこちらに背を向け、機械をいじりながらそう無邪気に言う。電気のついてない真っ暗な部屋で、見たことない形状の卓上ランプの明かりを頼りに、手際よく機械を分解する天才にジビアは頭を悩ましていた。
声のする方へ振り向くと、そう恐る恐る心配するサラの姿があった。流石アネットとエルナの保護者。アネットの様子に気づき、何があったのかを聞きに来たのだろう。
予想外のことをサラが指摘し、ジビアは驚いた。アネットは確かに『可惜夜』のメンバーにちょっかいをかけたり、脅したりすることはあるが、それは『灯』メンバーにも同じ。新しい玩具を試しているだけとしか思わなかった。
アネットはこちらを見定めるようにじっと見つめ、そして急にぱっと表情を明るく変えて、サラに抱きついた。
2人の会話にジビアはついていけないでいた。独特の空気、独特の距離感。トラブルメーカーが自由気ままに他者を戸惑わせているかと思えば、非力であまり目立つ場面が少ない少女になついている。
トラブルメーカーは『灯』には他にも売るほどいるが、アネットよりは予測不能ではない。
不安は多々あるが、サラに任せておけばなんとかなるという謎の安心感のほうが大きい。彼女の言う通り、アネットのことはサラに任せるとしよう。
サラに礼を言い、アネットの部屋から離れる。すると、キッチンの方から香ばしい匂いが漂ってきた。ごくりと唾を飲む。訓練の疲労が募りいい具合に空腹な今、ミートソースとチーズがこんがりと焼けた食欲をそそる匂いを一度嗅いでしまったら、キッチンに向かわずにはいられない。
不思議に思いながらキッチンへ着くと、中から騒がしい声と共に何かがガシャンっと落ちる音がした。
その光景は。一言で言うと地獄絵図だった。
頭から小麦粉の入ったボウルを被りながら、床でそう叫び転がるリリィ。今朝掃除したばかりのはずの床は粉であふれ、ボウルは凹み、本人はのたうち回っている。
そしてリリィが喚めいている横で、2人楽しくギャンブルをしているルナとレナ。
包丁で野菜を手際よく切りつつ、グレーテによからぬことを吹き込むティアと、それに感心したように頷くグレーテ。それを必死に止めるエルナ。
周りの騒音に苛つきながら、床一面に新聞を広げ何やらメモを取っているアイ。
そして。今にも消えそうな声でそう助けを求める、何故か椅子にぐるぐる巻きにくくりつけられたイオ。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。