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第23話

「引退」
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2024/09/10 08:22 更新
羽屋 瑠偉奈
はあ…
大きな幸せを逃しながらとぼとぼと駅を目指す。
気がつけば昨日を思い出し、目線は下を向いている。

いい試合だったと、私は思う。それぞれが士気を高めあい、全てを出し切った。それになにより、コート上の、彼らの勝利への貪欲さ。

私にはなかったものだ。いや、そう言っては語弊がある。「チーム」になかったもの、だろうか。

ぐるぐる考えだしてしまえば、止まらない。なかなかに浅はかな思考なのだろう。延々と考え続けることは疲れるのだが、それはやはり、人間ゆえの所業である。
日向 樹莉
あ、るーちゃんおはよ
ふと気がつけば、いつのまにか学校についていたようで、樹莉が挨拶をしてくれた。
羽屋 瑠偉奈
おはよう、樹莉。
日向 樹莉
テンション低いねぇ
羽屋 瑠偉奈
うーん、まあね
昨日の試合惜しかったよねー、と、なんでもないように話を繋げてくれる。私も、どのプレーがよかっただとか、次の反省点だとか、なんともマネージャーらしい会話を繰り広げながら向かうのは、最近、やっと通い慣れてきた体育館だ。
河原 龍司
あれ、マネちゃんズじゃん。
どしたの、こんな朝早くから。
日向 樹莉
朝練お疲れ様でーす
ひょこ、という表現が似合う樹莉の動きに、河原先輩は少し驚いたようで目を丸くした。うん、わたしも急に後ろに回られたらびっくりするよ。
羽屋 瑠偉奈
あー、えっと、三年生は……
十中八九、来ていないだろう。だが、やはり、少しは期待してしまうものだ。だから、今日は朝練に顔を出している。
河原 龍司
あー、うん。三年生は来てないよ。
たぶん、てゆーかほぼ確信だけど、という言葉は、やけに身体を突き刺してきて。
ああ、やっぱりそうなんだなと、身をもって実感する。




────三年生は、これで引退。
河原 龍司
まあ、受験あるから仕方ないっちゃ仕方ないけどね



「 それでもやっぱり、一緒にやりたいなあ。 」
その言葉に、私はなんて返事をしたのだろうか。河原先輩が朝練に戻る背中を見て、ただひたすらに、なにかを考えて、虚空を見つめて、ただ三年生の引退の事実をひしひしと感じていた。

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