翌日午前10時、俺は約束の通りいつも知識と落ち合っている駅の改札前で知識を待っていた
知識に到着の連絡を入れて知識の到着を待つ
そういえば学校以外で知識に会ったことがない、昨日の流れで普通に来てしまったが大丈夫かコレ
頭にふと不安がよぎるも、かき消して来る前に固めた決意を心の中でもう一度唱え直す
今日1日知識をしっかり観察して個性の目星をつけるそして学べそうなことを全て吸収してから個性を言い当ててこの奴隷宣言を白紙にする!
詠唱を繰り返していると名前を呼ばれて顔を上げる
そこには初めて見た私服の知識がいた
知識はやって来た電車の方へつかつか歩いていく
そんな背中を見て、黙っていたら本当に美人なのになぁ…と勿体なく思いながら知識の背中を追いかけた
いくつか駅を超えて電車を降り、閑静な住宅街の中を知識はスマホで場所を確認しながら歩く
そして俺は知識が持っていた無駄にデカいカバンを持たされながら知識の後をついてまわっていた
目的地に着いたのか知識はようやく足を止め、躊躇うこともなくどこかの家のインターホンを鳴らす
丁度その時、インターホンから返事が聞こえ、知識が探偵事務所を名乗ると扉が開き中から人が出てくる
知識は静かにささやいた
俺達はリビングへと通され、キッチンから麦茶を乗せたおぼんを持って、奥様という言葉がまさに似合う雰囲気の40代くらいの女性が出てくる
俺達を出迎えてくれた同じく40代くらいの黒縁メガネの旦那さんが奥さんに小さくお礼を言い麦茶を1口飲むと何か晴れない顔で知識に話を始めた
麦茶を飲んでいるといきなりこっちに話を振られたので何と返そうかと戸惑っていると
知識の口から聞いた事もない褒め言葉が出て来て驚きのあまり一瞬麦茶を吹き出しそうになった
同時に知識が別人みたいでゾワッとする←解釈違い発生
三毛猫、その単語に眉がピクリと動く
奥さんは涙目になりながら思いを語る
そんな奥さんの背中をさすりながら旦那さんは続ける
知識の心強い言葉に2人は安堵の表情を浮かべる
知識は堅苦しさから解放でもされたように腕を伸ばす
知識がスマホで見せたのは綺麗な3色の三毛猫の写真
幸せそうな顔の猫の破壊力に口角が上がるのを抑える
知識は懐から手帳を取り出し何かを書き始める
知識はスマホで地図アプリを起動し、その地図をさっきの2人の家を中心に丸で囲む
ここまで推理で捜索範囲まで割り出した知識、次はどんな驚く推理でみかんを見つけ出すのか…
期待でじっと知識を見つめ、知識は堂々と言い放った
直訳 : 探偵はそこまで便利じゃない
足で稼ぐと知識から言い放たれ俺達は
依頼人の声の録音を垂れ流し、ライトで照らしながら床下、換気扇の間、屋根の上など、言葉の通り地道に1つ1つの場所を探し回っていた
なら知識の個性は特別凄い力って感じではなさそうだ
"名推理"とか"名探偵"とか"未来予知"とかの個性だと予想してたんだけど…先はまだ長そうだな
知識の顔がどんどん鋭く歪み般若になっていく
…探偵も大変なんだな←この世に大変じゃない仕事はないのさン
恐る恐る近寄ってみると、そこにいたのはみかんではなく、白くてふてぶてしいデブ猫だった
デブ猫はゆっくり俺の方に近づくと俺の左足に擦り寄って来る、俺の左手にはちゅ〜〇が握られていた
そう呟いた頃には〇ゅ〜るを差し出していた←チョロい
みかん捜索用のちゅ〜〇を差し出したことを怒られると思い覚悟を決めて知識の言葉を待つ
しかし知識から出てきたのは
そうこうしているうちに早くもデブ猫はちゅ〜〇を食い尽くし、満足そうにどこかに向かう
とりあえず言う通りにデブ猫の後を追う
そんな猫の恩返しみたいなことがあるわけ…
初めて生で見る綺麗な3色の毛の三毛猫に喜ぶのもつかの間、知識に言われた通りみかんの右手に回る
みかんは異常なくらいに俺に威嚇してくる
その威嚇に怯んだ一瞬の隙にみかんはくるりと進路を変え知識が回った方へと走ってゆく
みかんは真っ直ぐ知識の方に向かっている、そして知識はみかんを捕らえるように走り出す
距離もタイミングも悪くない、行ける!!
と思ったのだが
知識は突然顔からスライディングするかのように綺麗に転び、みかんは転がった知識の背中の上を普通に踏み抜けてどこかへと走り去っていく
起き上がらない知識と見てはいけないものを見てしまった気がする俺とデブ猫の間に沈黙が生まれる
しばらくしてからゆっくり立ち上がった知識は、土を払っていつも通りの顔をしながら
何事も無かったことにしようとしていた←無理がある
知識ははぁ、とため息を吐き俺の肩に手を置くと
でも言われてみれば確かに、コイツがまともに体育の授業受けてるの見た事がない
担任が意地でも体力テストだけは受けさせようとしてた時も脳みそフル活用して逃げ切って、結局誰もいない放課後に渋々受けさせたんだっけ←とんでもねぇ野郎だ
知識が絶対に身体能力系の個性じゃないと理解したところで、そんなことよりみかんが普通に逃げていったことを思い出す
どこへ?と思った俺の視線を感じ取ったかのように
名探偵はそう言い放った













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。