第16話

過去をなくした天使⑤
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2026/03/12 15:15 更新


北斗Side





髙地の話はそこでぽつんと途切れた。


北「………………」


京本さんの語られた過去………


それは衝撃的すぎて俺は言葉を失ってしまった。


北(京本さんに……そんな過去が………)


俺たちの間に流れる時間は、まるで粘土のように重く、引き伸ばされていった。


北、ジェ、髙「「「…………………」」」


誰も喋らない代わりに、食器の擦れる音やお客の話し声がやけに耳についた。


その沈黙を破ったのは、髙地だった――。


髙「……大我が襲われた日からずっと音信不通になっていて、心配になった俺たちは大我の家を訪れた。大我は、俺たちでさえ怖がり近寄ることさえ出来なかった。大我に植え込まれた恐怖心は俺たちを拒絶したんだ」


ジェ「そうそう……。あの時の大我は今にもこの世から居なくなりそうだったもんな……」


髙「そうだな……、あんな大我初めてみたよ。それだけ心理的に受けたトラウマは大我を苦しめ続けた。精神科にも通い、安心できる環境を整えることで、次第に俺たちも怖がる事もなくなったんだ」


ジェ「俺たちに心を許した時は嬉しかったね?こーち!」


髙「ああ。それでも大我が話が出来るのは俺たちだけだったからな。出版社と編集担当を代えてもらって、少しずつ本当に少しずつ仕事ができるまで回復していったんだ」


ジェ「今も俺たち以外とは話すのが怖いみたいだけど、その大我が北斗には気を許してるって聞いてビックリだよ!」


髙「これもいい傾向かもな」


ジェ「ねぇねぇこーち。これなら大我のこと任せられるじゃない?」


髙「だな」


北(………?)


髙「北斗、大我のこと好きなんだろ?」


思わぬ言葉に、俺は「え"ぇぇ」と慌てふためいた声を上げた。


まさかここで、その「好きなんだろ」なんて言葉が出てくるなんて思ってもみなかった。


髙「えっ?違うの?」


北「そ、それは………」


髙「もしかして、俺と大我が付き合ってるって思ってるとか?」


北「ち、違うの?!」


思っていた違う言葉が返ってきて、俺は思わず体を乗り出していた。


俺の反応に髙地が「はは、まさか。そんなわけないでしょ」と首を振る。


ジェ「そうだよ〜北斗。こーちは俺と付き合ってんの♡ねっ?こーち♡」


ジェシーが髙地の肩を抱き寄せれば、髙地は照れくさそうに微笑んでいる。


髙「まぁ、そうゆうことだから///」


ジェシーと髙地の幸せそうな姿をみてれば、二人が言っていることは本当なんだろうな……。


髙地と京本さんは付き合っているんじゃないかと、思っていた部分もあったから二人の口から「付き合っている」って聞かされて安堵した。


それと同時に思わず驚きの声を上げてしまった。


北「そっか……違うのか……なんか安心したって、え"ぇぇぇ!?」


ジェ「AHAHAHA!反応おっそっ!」


「うっせぇよ!ジェシー!」と、軽く腕で小突き合いが始まる。


あの人と別れてから恋愛なんてしてこなかったから、仲睦まじくじゃれ合う二人を見ていると、羨望の眼差しを向けてしまう。


羨ましい……。


髙「俺にはジェシーがいるから、大我のことよろしく頼むな」


ジェ「そう!大我のこと幸せにしてやってよ」


北「俺が京本さんを……幸せにする……」


たとえこの先どんな苦難があろうとも、京本さんの幸せを守り抜く。


それが俺の、いや俺と樹の新しい生きる意味だ。



 


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