「どうする?」
高瀬先生がそう聞く。
冬は日が暮れるのが早い。辺りはもう暗くなってきた。
もう星も見えるのだろうか。
゙聖夜の星 ゙
何だかロマンチックだ。
「高瀬先生さえよければ、是非。」
そうして、私たちは紙を見ながら穴場へ向かった。
行く途中にある店でササッと食べられそうなものなどを買う。
少し歩くと、目的地に着いた。
周りには人があまりいない。
しっかりとした穴場だ。
二人掛けのベンチに座って、買ってきたものを食べる。
「高瀬先生……今日は本当にありがとうございました。わがままに付き合ってもらって。」
「全然いいよ。久保田さんじゃなかったら来てなかっただろうし。」
「え……?」
私じゃなかったら来てなかった?
また胸の鼓動が早くなる。
期待しちゃダメなのに。
「本当にここから見える星って綺麗だね。」
高瀬先生は夜空を見上げながらそう言う。
「聖夜の星……ですね。」
「あ、写真撮ろ。」
高瀬先生はそう言ってスマホを取り出し、夜空を写した。
私もスマホで夜空を撮る。
「綺麗……」
思わず声が出てしまうほど、本当に綺麗な聖夜の星だった。
「先生……」
「何?」
私は今日、自分で想いを伝えると決断し、梨乃とも約束をしてきた。
今、ここで言わなければならない。
今、言うべきだ。
「……私、高瀬先生のことが好きです。」
高瀬先生は少し困惑している様子だ。
まだ伝えなければならないことはたくさんある。
頑張れ、私。
「高瀬先生が教育実習生としてうちの学校に来てくれていたのは分かってます。本来なら生徒と関係を持つはずもなく、二人で出かけるなんてことも無い。そのことは重々承知しています。
でも、私は先生を好きになってしまった。先生は今、教師という夢に向かって頑張っている時です。私はそんな先生の夢を邪魔したくはありません。
だけど、私が弱ってた時に助けてくれて、わがままも聞いてくれて、そんな優しい高瀬先生に想いだけでも伝えたかった。迷惑なのは分かってます。それでも、一握りの希望にかけたいんです。」
私は深呼吸をする。
「高瀬先生、好きです。出来ることなら、ずっと先生のそばにいたいです。」
私は頭を下げた。
怖くて怖くて、高瀬先生の顔が見れない。
振られる覚悟はしてきたはずなのに……な。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。