彼女は距離感がおかしい。
手を繋いだり抱き合ったり、そんなのは日常茶飯事。
正直嫉妬していないと言えば嘘になる。
……それでも私は彼女が好きなのだ。
だって私以外にこんなこと言わないから。
一瞬、私をじっと見つめる彼女の瞳に吸い込まれそうな感覚を覚えた。
私をそっと抱き寄せて、壊れ物を扱うみたいに頭を撫でる。
自分の心臓の音が部屋中に響いているような気がして、彼女にまで聞こえているのではないかと不安になる。
でもただこうして抱き合っているだけの時間が好きだったりする。
つい零れ落ちた私の言葉に静かに微笑んだ気配がした。それから彼女は私に何度も優しいキスを落として、気がつけばベッドに沈んでいた。
私を見下ろした彼女が口の端を持ち上げて、もう一度優しくキスをした。
まるで獲物を見つけた狼のように一瞬で表情を変える。鋭い瞳から逃れることなんてできなくて、私はただその瞳の美しさに息を飲むばかり。
私はこの瞬間をどうしたって嫌いにはなれないのだ。
彼女になら襲われたって構わない。そう思ってしまう私は、彼女を相当愛している。そして彼女もまた、私を愛していると確信できる。
ぼんやりとした意識の中、力の抜けた腕を持ち上げて彼女の顔を引き寄せる。
一瞬だけ触れた唇が離れた後、すぐにまた重ねられた。
彼女は他の人にこんなことはしない。
“私だけ”に与えられた特別な時間。
fin.














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。