その口振りは相変わらず軽いもので、
青年の命に対する考えの歪みが伝わって来た。
この人はきっと、死ぬ事を何とも思って居ないのだろう。
感覚が可笑しいのか、それとも
…もう失う物なんて無いのか
人間、何時かは死ぬ。
それが何時なのかなんて、判る訳も無いのだから、
別に何時だって良いのかもしれない。
その言葉には妙な説得力があった。
「確かにその通りかもしれないな」
そう一瞬でも考えて仕舞う程には…
流石の私もある程度の常識は弁えている。
初対面の相手と心中、なんて死に方は洒落にならないし望む所でも無い。
今迄掻い潜ってきた修羅場と比較すればマシな死に様だが、
そこに拒否権が存在して居るのであれば話は別だ。
楽観的な思考回路に思わず溜め息を吐いて、
青年としっかり目を合わせる。
足掻き続けた人生だから、
死ぬ時くらいはせめて、潔く死んでやりたい。
宗教とか神とか信仰して無いし、
転生とか来世とか信じて無い。
そうなると、たった一回きりの人生なのだから、
悔いはなるべく残したく無い。
未だ、死ねない
生きる意味なんて無いけれど、
死ぬ理由も無い。
なら、
死んで良いと思える迄、無様に生きたい。
そんな生き方だって、悪くは無いと思う。
ネオンに照らされて薄紫に染まった青年の顔に、影が落ちる。
青年は悪戯っぽい表情を浮かべて
私に顔をぐっと近付けて来た。
曖昧な返事で御茶を濁して、足早にその場を去る。
脳裏には、名も知らぬ青年に言われた
「心中」という言葉が焼き付いていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。