第87話

異彩___💎💙
1,184
2023/06/17 16:51





あなたは


ここ最近、確実に俺を避けている。


電車の時間もずらされたし


学校の廊下ですれ違っても


目を合わせない


付き合ってるわけではないし


友達の1人だが


そんな態度を取られると


俺も納得いかない


だから、俺は行動に出た


俺の人生ではありえないくらいの早起きをして


学校に一番乗りで行った


すれ違う先生全員に驚かれ


それを適当に相手しながら


ついたのはあなたの教室


長い校舎に一列に並ぶ教室


俺とあなたの教室は端同士だ


そのせいで、学校ですれ違うことも


そう多くはない


当たり前だが、まだ誰もいない教室に入り


そのままどんどん足を進める


あなたの席は知ってる


窓際の1番後ろ


俺がわざわざ教室に行ってやっても


窓の外を眺めてるせいで


全然こっちを向かないあなたを何度も見てきたから


その席にカバンを置き


どすん、と座り込んだ


何分後にあなたが来るかなんて


知ったこっちゃないが


待つだけだ。


窓からの景色は端の教室なだけあって


良い。とは言えないほどのものだった


ここから、いつも何を見てるんだろうか


ドアの開く音


あなたではなかった。


メガネをかけたそいつは


他クラスの教室で堂々としている俺を見て


ぎょっ、とした顔をした



樹「なんだよ」



別に、と吃音混じりにそう答え


気まずそうに席に着く


そんなに怖がられている理由もわからない


どんどんと人が増えていく


俺を見ては、すぐに目を逸らす


それはもう良いとして


あなたが一向に来ない


もうすぐチャイムが鳴るっていうのに


ドアの開く音


また、ドアの方に目をやる


あなただ。


スタスタとこの席まで歩いてきて


それから、机の横にカバンをかけて


俺に背を向けた



樹「は?」



あなたは一度だけ立ち止まって


また、歩いて行こうとする


おはよう、すらない


おはようじゃなくても


何してんの、とか


邪魔、とか


そんなんでも良いから


かける言葉なんて死ぬほどあるだろ


なのに、なんでそんな態度取られなきゃいけない


思わず立ち上がった



樹「シカトしてんじゃねぇよ!!!!!!」



あなたの背中へそう怒鳴りつけた


教室中が静まり返り


俺をチラチラと見ては


すぐに目を逸らす


当の本人はゆっくりと振り向いて


俺を見た


きちんと目があったのなんて


何日ぶりだろう


次の言葉を考える俺の手首を


女らしい力で握って


俺をグイグイと引っ張る


その途中でチャイムが鳴ったけど


そんなの御構い無しだ



樹「ちょっと、あなたって、」



やっと止まったのは


使われてない埃だらけの教室



「樹、そんなに焦って、私に夢中みたいじゃん」

樹「は、?」

「朝イチから教室で待ってたの、ずっと見てたよ」



ニコニコと笑いながら話すけど


面白いところは一つもない



樹「お前、変だよ」

「健気で可愛かったよ、樹」

樹「可愛いっていうな」

「ちょっと遊んでみただけ」



北斗から変なやつだとは聞いていたけど


想像以上で引いた


でも、ギリギリで好奇心が勝った



「もうこのまま早退しよっか」

樹「がち?」

「受けたい授業でもあんの?」

樹「ねーよ」



その日から俺らは2人で1つみたいになって


あなたには


みんなから避けられる様になったんだけど、と


言われた


そりゃ、俺といるってなったらそうなるだろ


とは言い返さずに


どんまい、とからかっておいた


あなたはめちゃくちゃ変なやつで


めちゃくちゃ可愛いやつだ


代わりなんて絶対いない








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