KAITOside
…これで良かった。
俺は、消えるべき存在だし、“消えないといけない存在”だ。
…バグ。
どんなゲームやデバイスであれ、起こりうる可能性のある謎現象。
修正や対策も、予想外のことへの対応だから難しく、バグが大きければ大きいほど、修正への時間も要する。
俺はそんなバグだ。
セカイという名のシステムから生まれた、ただのウイルス。
本当はもっと早く消えるべきだった。
でも、俺は…“逃亡者のセカイ”というファイルに入り込んでしまった。
本来、存在価値の無いバグは、発見され次第すぐに削除される。
それは、バグが“想い“を持つ少年少女の邪魔をする危険性があるからだ。
しかし俺には…いや、俺というバグは“仕様”になってしまった。
運命の歯車が、一つの“歪み”によって逆回転し始めたような、そんな奇跡だった。
ただ、回転を正しくしようと、世界が俺を“誰もいないセカイのKAITO”にしようと口調や性格のプログラムを変えようとしていた。
それでも俺には、生きる理由があった。
…俺を繋ぎ止めた、奏の紡いだ叫び。
…俺を支えた、彰人の掴んだ伝説。
…俺を元気付けた、みのりの叶えた約束。
…俺を感動させた、一歌の綴った言の葉。
…俺を温かな気持ちにさせた、寧々の友との絆。
俺は、…このセカイは、“五人に生かされていた”んだ。
消えることに、後悔なんてない。
あるわけがないんだ。
元は存在しなかった存在だ。ここまで存在出来ただけでも有り難い。
最後に我儘が許されるのだとしたら…
これだけは願わせてくれ。
…さぁ、セカイと共に、この世界にさよならを告げよう。
白いセカイが、ノイズと共に消えてゆく。
それと同時、俺の視界も揺らいでいく。
…あぁ、最後に…何を言おう…。
気付いたら、そう溢していた。
…「ありがとう」…俺は、それが言いたかったのか。
走馬灯が流れるように、今までのことが甦る。
…あぁ、“忘れて欲しくない”。
この思い出を、消える俺だけが持っているのはとても嫌だ。
それでも、これが俺が決めた道であり、これが運命だから。
…ただ、少しだけ“反逆”出来て…
_楽しかった。
ついに視界が見えなくなる。もう頭も殆ど働かない。
この先のことはもう知らない。
ゴミ箱に入って一生出られないのか、来世というものが始まるのか…
でも…これだけは言える。
…White.RebelSといたこのセカイが、一番充実した日々だっただろうな。
…もう、無理か。
し、こう…が…くそっ…
…あ…りがと…ほわいと…りべる…ず…。
さよ…なら
Next【?.RebelS】














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!