第229話

記憶の海 第一話【KAITOの決意】
553
2025/12/02 08:00 更新
KAITOside

…これで良かった。

俺は、消えるべき存在だし、“消えないといけない存在”だ。

…バグ。

どんなゲームやデバイスであれ、起こりうる可能性のある謎現象。

修正や対策も、予想外のことへの対応だから難しく、バグが大きければ大きいほど、修正への時間も要する。

俺はそんなバグだ。

セカイという名のシステムから生まれた、ただのウイルス。

本当はもっと早く消えるべきだった。

でも、俺は…“逃亡者のセカイ”というファイルに入り込んでしまった。

本来、存在価値の無いバグは、発見され次第すぐに削除される。

それは、バグが“想い“を持つ少年少女の邪魔をする危険性があるからだ。

しかし俺には…いや、俺というバグは“仕様”になってしまった。

運命の歯車が、一つの“歪み”によって逆回転し始めたような、そんな奇跡だった。

ただ、回転を正しくしようと、世界が俺を“誰もいないセカイのKAITO”にしようと口調や性格のプログラムを変えようとしていた。

それでも俺には、生きる理由があった。

…俺を繋ぎ止めた、奏の紡いだ叫び。

…俺を支えた、彰人の掴んだ伝説。

…俺を元気付けた、みのりの叶えた約束。

…俺を感動させた、一歌の綴った言の葉。

…俺を温かな気持ちにさせた、寧々の友との絆。

俺は、…このセカイは、“五人に生かされていた”んだ。

消えることに、後悔なんてない。

あるわけがないんだ。

元は存在しなかった存在だ。ここまで存在出来ただけでも有り難い。

KAITO
KAITO
…ただ、一つ。
最後に我儘が許されるのだとしたら…

これだけは願わせてくれ。
KAITO
KAITO
“White.RebelS”の未来が…この白きセカイをキャンバスに、様々な色で輝きますように。
…さぁ、セカイと共に、この世界にさよならを告げよう。

白いセカイが、ノイズと共に消えてゆく。

それと同時、俺の視界も揺らいでいく。

…あぁ、最後に…何を言おう…。
KAITO
KAITO
…ありがとう、White.RebelS。
気付いたら、そう溢していた。

…「ありがとう」…俺は、それが言いたかったのか。

走馬灯が流れるように、今までのことが甦る。

…あぁ、“忘れて欲しくない”。

この思い出を、消える俺だけが持っているのはとても嫌だ。

それでも、これが俺が決めた道であり、これが運命だから。

…ただ、少しだけ“反逆”出来て…

_楽しかった。

ついに視界が見えなくなる。もう頭も殆ど働かない。

この先のことはもう知らない。

ゴミ箱に入って一生出られないのか、来世というものが始まるのか…

でも…これだけは言える。

…White.RebelSといたこのセカイが、一番充実した日々だっただろうな。

…もう、無理か。

し、こう…が…くそっ…

…あ…りがと…ほわいと…りべる…ず…。

さよ…な





Next【?.RebelS】

プリ小説オーディオドラマ