第2話

異能力×ディストピアパロ②
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2026/01/03 07:11 更新
li
あ~っ!おかしい……おかしいおかしいおかしい!!
清潔な廊下をカツカツと音をたてて歩く。コンクリート製の床はその音を良く反響させて、それがまた私の苛立ちを増幅させた。ここは組織の実験棟、そして私は先日めでたく組織の研究者として所属することになった新人だ。
組織に所属している人間は大きく分けて2種類。人類の平和を守るため、あるいは上層階への移住という最上級の安全を求めて並々ならぬ努力の末になる研究者。そしてもう1種類は哀れ異能力の才能を見出され強制的に前線で戦うことを求められ連れてこられた異能力者。……正直、私は人類の平和も安全も望んでここに来たわけじゃない(そりゃあればいいけど)。私は師匠と一緒と並んで歩くために必死になって勉学に励み、狭い狭い門を突破したのだ。
師匠―――めめんともりは物心ついた時からずっとそばにいてくれた。身寄りのない私を、ほおっておけばその辺で野垂れ死にしていたであろう私を助け、少ない食料を分け与え、化け物のいるこの世界を生き抜く術を教えてくれた。これからもずっと、ずっとそばにいられると思っていたのに。
???
『お前、能力者だな?……それも天然の』
li
『いや、やめて!!!ししよーを連れていかないで!!!』
mm
『……大丈夫です。私のことは心配しないで。あなたならもう一人でも生きていけます。……生きるんです、レイラー』
師匠は能力者の中でもさらに珍しい、生まれついての異能力者だった。そしてそれを組織に知られることは、戦いを強制されるということでもある。……だけど、師匠は私を化け物から守る際に能力を使い、そして連れていかれてしまった。もうこんな思いはしたくない。せめて、師匠を助けられるようにと思ってここまでやってきた。
li
(……なのに!!)
いざ組織に加入した私を待っていたのは、呆れたように、でも少し嬉しそうに笑う師匠―――ではなく奇妙な現実だった。誰に聞いてもめめんともりと言う名前の能力者はここに居ない、と言われる。実際、施設内を、それこそ異能力者たちの居住地まで見て回ったが、その藍色の長髪を見つけることは叶わなかった。……何度も最悪の状況が頭をよぎり、だけどそんなはずはないと左右に振ってその想像を消し去る。
li
ししょーは強いんだから、そんなはずない。絶対生きてる……
???
誰が生きてるんですかー?
li
ぅわぁあ!?
ひとりごとだったはずの言葉に返事が返ってくる。思わず大声をあげながら顔をあげると、いつの間にか目の前に人が立っていた。
外にぴょんとはねた茶髪のショートカット、歳は私と同じくらいだろか。その服装は見慣れた一般的な支給服で―――間違いなく、異能力者の証だ。
li
え、誰ですか?ていうかここ研究棟なんですけど、なんで異能力者がいるんですか?
sr
えへへ、わたしはレイマリって言います!!あなたは、レイラーさん、ですよね?
li
なんで名前……
sr
ふふーん、それは~……っていうかそもそも噂になってましたよ。わざわざこっちまで直接来て人探しをしている研究者がいるって、あなたですよね?
li
それは、多分そうだけど……
私が警戒の色を隠せないままでいるのと対照的に、異能力者―――レイマリはニッコリと満面喜色の笑みを浮かべた。
sr
やっぱり!!そしたら~探し人の情報、知りたくありません?
li
っ何か知ってるの!?
sr
わわ、慌てないでくださいよ~今はまだ、知らないです。でも……わたしの能力なんですけど、これ、わかります?
レイマリは勿体ぶったように話しながら、両手を胸の辺りで広げる。しばらくすると、その間にパチパチと小さな閃光がはしった。
li
……電撃、ですか?異能力としては基本の型ですよね
sr
ふふん、確かにそうです。でも、レイマリちゃんは天才なので別の使い方を見つけちゃったんですよね~……これ、ようするに電気信号を操れるんですよね。だから、ここの秘密のデータとかも見れちゃったり……♪
li
お願い、そこの部屋の配線使って
私の即答にレイマリは目をぱちぱちとさせた後、少し引いたような顔で言う。
sr
……言っておいてなんですけど、ふつーにバレたらヤバいですよ?
li
関係ない。私にとって大切なのはししょーだけだから
言いながらレイマリの手をとって近くの部屋に引きずり込む。……この時間ならこの辺りで実験する人もいない。どうせここは下級研究員の管轄だ。対して警戒もされていないだろう。
電子パネル近くの壁を叩く。簡単に外れた壁面からは配電盤が露出した。
li
はい、これでつながるから。……組織の人員名簿があるんだけど、私の権限じゃ見れる範囲に限界があるんだよね。探すならまずはそこからだと思う
sr
はいは~い
レイマリはコードの一つを外すと、手早くそこに電撃を流す。するとパネルが反応して光りだした。……しばらく待つと、パネルはたくさんの文字列を映し出した。
sr
これでどうですか~?多分、最高権限まで偽装したんで全部みれるんじゃないです?
レイマリはくるりと振り返ってそんなことを言う。……その手際の良さに今度はこちらが引く番だった。
li
……レイマリさん、だっけ?手慣れすぎじゃない?
sr
ふふん、わたし天才ですから!……それより早くみましょうよ~
レイマリに促されて改めてパネルをみる。……それは一見普段私が見ることのできる職員一覧のようだった。だけど、すぐに様子がおかしいことがわかる。見覚えのない名前に加え、赤文字や灰色に変わった名前が散見されるのだ。
sr
この色ってなんですか?
li
知らない。私も初めて見た……ねえ、めめんともりって名前探すことってできます?
sr
あーこれだけたくさんだと目視じゃめんどいですもんね~っと、はい、ありましたよ
レイマリが電撃を操作すると、パネルの画面はスライドし、止まる。その中心にはめめんともりの名前が刻まれていた。……やっぱり、師匠はいる!そっとその名前をタッチする。指が、震えていた。
sr
わ~めめんともりさん、ってすっごい綺麗な人なんですね~?……へえ、こんな風に自分も記録されているのかな
li
なに、これ……
そこには、少しだけ大人びた師匠の顔写真と年齢、身長、体重といった基本的な情報から異能力について、また今までの戦績についてそういった情報が書かれていた。それよりも重要なのは最後の一文だ。
li
『xx年xx月xx日、任務中に組織から逃走。同じく同日逃走したiemonと共に捜索対象となる。見つけ次第捕獲、最悪の場合は殺害も視野に入れること』……どういうこと!?
バンと壁を殴りつける。組織から逃走……それは他ならぬ組織を裏切ったという事実だ。この世界で組織を相手取るということは、死と同義だ。どうしてそんな無茶なことを彼女はしたのだろう。と、同時に皆の言葉の意味も理解する。そんな人はここにいない……それは文字通りの意味だったのだ。突然大声をあげた私におろおろとレイマリさんはしている。だけど、今はそんな彼女を気を遣う余裕はなかった。



―――恩人を追いかけて走り続ける少女は、やがて世界の真実を知ることとなる。それは喜劇なのか、あるいは悲劇なのか。今は誰にもわからない。
・レイラー
一般職員(研究職)
孤児だったところをめめんともりに拾われ、生き延びる術を学び、師匠と慕う
組織に連れていかれた彼女を追いかけて組織に加入したが、組織にはめめんともりがおらず困惑する
その行方を探すうちに失踪の裏側と真実を知ることになる

・レイマリ
新人能力者(電撃)
組織に入りたてだが早くも才能を開花させる
本人も自分の才能に自信を持っており、時にはスリルを求めて危ない橋を渡ることも
能力者の中で噂になっていたレイラーに興味を持ち、接触を図る
本人は世界の平和などにあまり関心はないが、レイラーと一緒にめめんともりの行方を探すうちに大きな騒動へと巻き込まれていく

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