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第1話

異能力×ディストピアパロ①
210
2025/12/27 12:34 更新
※パロディ
※書きたいところだけ書くので1話ごとに場面飛びます
頭上を流れるサイレンの音は、すっかり人々の日常の一部となってしまっている。それだけ化け物が地上に現れてから長い時間が経ってしまったということだろう。常に命の危険と隣り合わせの世界で、比較的安全が保障されている施設の中を、私は歩いていた。
ck
(今日も戦いが終わったみたい……皆、大丈夫かなあ)
ある日前触れもなく現れた、異形のとしか言いようのない化け物はあっという間に地上を覆いつくし、その圧倒的な力に人類は数をみるみるうちに減らした。そんな化け物に対抗できるのは限られた人間が獲得できる異能力だけで。素質のあるものは半強制的に組織へ連れてこられ、訓練を受ける。そして能力を発現させた人間から、戦いに向かうことになる。私も、選ばれた一人……いまだに能力がわからないことを除けば。
ck
……せっかく選ばれたのに。これじゃあ菓子ちゃんも守れない
同期はすっかり皆先に進んでしまった。私だけがいつまでも半人前。組織に入ることを恐れる人も多いけれど、私は嬉しかった。どんくさい私でも、いつもドジばかりの私でも、唯一の家族である妹を守る力を手に入れられると思ったから。……なのに、現実はこうだ。
ck
……っとあれ、ここ、どこだろう……?
考え事をしていたらいつの間にか知らない廊下に来てしまったらしい。周囲の景色が見慣れないものになっていた。……まずい、迷子かも!?
こんなことでまた皆の手を煩わせるにはいかない。そう思って走り出す。だけど、慌てれば慌てるほど墓穴を掘ってしまい、余計にわからない場所に迷い込んでしまった。
ck
うう……どうしてわたすっていつもこうなんだろう……
廊下で頭を抱えていると、ガタン、と音が聞こえた。周囲を見回すと、一つだけ半開きになって、明かりが漏れている部屋があった。……ここから、かな?もしかして誰かいるのかも。こうなったら迷惑をかけてしまうけれど、諦めて道を聞こう、そう思ってそっと扉を開ける。おそるおそる声をあげた。
ck
す、すいませ~ん。誰かいませんかー……?
……返事はない。そっと足を踏み入れると、そこは何かの実験室のようだった。だけど、あまり使われていないらしい。ごちゃごちゃと荷物が積まれて、それらにはうっすらと埃が積もっていた。
ck
(音がしたと思ったけれど、気のせいだったのかな……)
諦めて部屋を出ようとする。だけど、そのタイミングでまたガタ、と音がした。今度は間違いなく部屋の中からだ。少し考えて、荷物の影から部屋の奥をそっと覗き見る。すると、想像よりも広い部屋だったらしい、私のいる場所よりもずっとずっと奥、人影が見えた。声をかけようとして、その姿に思わず息を止める。おそらく真っ白なフード付きのコートを着ているのだろう。オーバーサイズのそれは人影の性別も姿もあいまいにしていた。しかし、それ以上に異質だったのは、それが真っ赤な血で染まっていたからだった。そこまで見て、ある噂を思い出す。
???
『今度からわたしたちも戦わなきゃいけないのかあ……怖いなあ』
???
『でも、アレがいれば大丈夫かもよ?』
???
『アレ?』
???
『そう!……先輩たちが言ってたんだけどさ、いつも先陣を切って戦う人がいるんだって。めっちゃ強いらしくってさ~むしろそいつがバケモノみたいだって。でも、それがいればほとんどこっちの被害はないらしいよ』
???
『そんなことあるの!?』
???
『そうそう!アタシも見たことはないんだけどさ、いつも真っ白な服を返り血で赤くしてるらしいよ。だから、一目でわかるって』
???
『へ~。あ、そしたらあとあれじゃない?白衣の悪魔もいれば……』
???
『え、何それ』
???
『あれ、知らないの?なんかね……』
同期達の会話が頭の中をリフレインする。……私はまだ戦場に出ていない。だから、そのバケモノのことは噂でしか聞いたことがなかった。だけど、目の前にいるのは間違いなくその特徴に当てはまっていて。やっぱり逃げよう、そう思って一歩後ずさると積み上げられていた荷物に足をぶつけてしまい、大きな音を鳴らしてしまった。もちろんそれに気づかれないはずもなく。
ck
(ど……どうしようどうしよう!!)
焦っても何も変わらず。それはゆっくりとこちらを振り返って。その拍子に頭からフードが滑り落ちる。そして見えた姿は―――バケモノと言うという言葉からは到底想像できない、澄んだ水色の髪と真っ赤な瞳の幼い少女だった。
ck
……え?
思わずポカンと口を開けてしまう。少女は、振り返ってきょとんとこっちを見ている。……その表情はやはりあどけないもので。その肌まで染め上げた真っ赤な血が無ければ施設に迷い込んでしまっただけなのではないかと思うほどだった。そして動揺した私から出た言葉はまたこの場に似つかわしくないもので。
ck
えっと……こんにちは?
ck
(ぜったいまちがえた!!!!でもホントに迷子かもしれないし!!!!?)
とっさに出た言葉はこの場に似つかわしくない平凡な挨拶で。思わず脳内で一人ツッコみをしてしまう。すると、予想に反し少女はぱっと笑顔になって返事をくれた。
???
……っこんにちは!!!!
その声はやはり少女そのもので。やっぱり迷子なんじゃ……と思い急に心配が勝ってきた。
ck
こんなところで、どうしたの?迷子?ケガしてない?
???
……マイゴ?ううん。私、今帰ってきたところだから
ck
かえってきた?
???
うん!いっぱい倒してきた!!!で、ね!ケガもしてない!!これはねーカエリチ?だから
……やっぱりこの子は噂のバケモノに違いないらしい。なんて言っていいか迷い、そもそもこの子の名前も知らないことに気が付く。
ck
……わたす、茶子って言います。あなたは?
???
えっとー……ウパ
ck
ウパ、ちゃん?
up
……っ!!
私が言われた名前を呼ぶと、少女―――ウパは更に嬉しそうに、満面の笑みをみせる。
up
そう!私ウパ!!ちゃんと呼んでもらえたのはじめて!!ありがと、チャコ、さん?
ck
はじめてって……
up
みんなねージッケンタイとか、バケモノって呼ぶの。でもチャコさんはウパって言ってくれたから。嬉しかった!!ありがと!
そんな……絶句しているとウパはとてとてとこちらに走って来て、そのまま私に抱き着こうとして、ピタッと止まる。そして慌てたように両手をぶんぶんと振り回した。
up
あ、危ない!!今私汚いのに……いっつもこうするから怒られるんだよね
そう言ってえへへ、と困ったように眉を下げる。……彼女は、何度言われたのだろう。皆を守るために戦ったその身を、汚いと。触るなと。そこまで考えて私は思わずその小さな身体を抱きしめていた。
up
え!?ダメだよ、チャコさんまで汚れちゃう!!
いっそう慌てだす彼女の顔を服の袖で拭う。そうして見えた肌は私たちと同じ人間のそれで―――バケモノなんかじゃない。
ck
……ううん、汚くなんてない。ウパちゃんは汚くなんてないよ
抱きしめたまま、ポロポロと涙がこぼれだす。もう私には、この子をバケモノと呼ぶことはできなくなっていた。



―――まだ何物でもない少女と、一人の実験生物が出会う。それは、この世界を変える始まりの合図だった。
・茶子
新人能力者(未発現)
異能力者になることで菓子の住む世界を守れるのは嬉しいが、化け物と戦うのは少し怖い
能力が発現せず焦っていたところ組織の施設で道に迷い、謎の少女に出会う

・???(ウパ?)
水色の髪と赤い瞳が特徴的な、幼い少女
気が付いた時には組織におり、ウパという名前は彼女の中に残っていた数少ない記憶
真っ白なフードを被り前線で戦い、つねにその姿は返り血で赤く染まっている
その圧倒的な強さと姿から組織内でバケモノと噂になっている

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