『共鳴』、それはこの世界において重要な役割を果たすもの。共鳴が可能ならばその者の価値は上がる。逆に使えなければ唯の魔法が使える一般人と同様。
別に使えなくても上林には支障はない。ただリシュールとトーハが上林の付加価値として欲しかっただけ。
その方が上林はこの異世界という場所で生きやすかったので。
リシュール「さて、始めようか」
キラリと魔法ボタンを光らせたリシュール王子。一瞬もせずに俺は何故か見知らぬ場所にいました。
上林『え??なんで転移した??』
悲しいことに慣れなのかなんなのか知らんがもう俺を移動させたのが魔法だと驚かなくなっていた。
フィール「これから《共鳴》の適正検査を開始する。リシュール様とトーハ様2人がそれぞれ魔法をお使いになられる。それにコウタが反応すれば《共鳴》が可能であると分かる」
上林『俺は何もせずに立ってればいい?』
フィール「ああ。スタットカールは持っているな?それを握るだけでいい」
言われた通り、ポッケから魔法ボタンを出して握りしめる。するとオートで魔力が流れる感じがしたから特訓の成果があったもんだなと思う。トーハ王子にも感謝。
フィール「さ、始まるぞ」
ドッキドキバックバクで手汗がやばい。この場所にはフィールと俺の2人しか居ないけどなんか圧がある。
……ん?あ、これ魔力の圧か。故意に集めたのか分からんが。これを感じ分ければもしかして魔法の種類が分かったりするか?
新しい技術会得の予感がするのはちょっと置いといて。先ずは検査に集中だな。
取り敢えず神経を尖らせようってことでフィールのことは存在しないものとしてこの部屋から認識を外す。慣れたものよ。
因みになんで慣れたものなのかって言うと会社で上司を無いものとして扱わないと俺の激弱メンタル君(仮)は持たなかったからだ!
決してよくある生まれつきの固有能力では無い。断じてない。
ぶあり
上林『ぁ……?』
フィール「!?」
魔力が動いた。そよそよ漂ってたのに急にブァって。
そうしたら俺の持つ魔法ボタンが熱くなって?
なんか火が出てたよね。というか火柱。
なるほど、これが共鳴。
ぶありが火魔法ね。了解。
というかそれより。
上林『あっっっづ!?』
急激に熱を持った魔法ボタンはそれはそれは熱くて。なんていうか、沸騰したヤカンに触った感じがして俺は魔法ボタンをぶん投げた。
上林『俺のボタンから魔法が出るとは聞いてない!!!!』
てっきり身体の内部で何かが起こってそれが王子達に伝わるのかと思っていたがまさか物理(放火)だとは。とんだ勘違いであった。
いやいや、王子達も従者達も悪いとは思うけど。
フィール「コウタ、スタットカールを持ち直してくれ。再開するぞ」
スィーっとフィールが風魔法で魔法ボタンを浮かして俺の所へ持ってくる。水でもぶっかけたのかあんなにも熱かったコレは普通の温度で、尚且つなんだかウェッティ。
上林『うん』
さ、流石にもう何も無いよな。魔法が出ても手は燃えないし大丈夫だよな。不安だ。
_sideフィール
フィール(火属性の共鳴は有り、か。コウタは物理特攻型なのかもしれないな)
先程燃えたスタットカールを見た時、私は震撼した。
嗚呼、これ程までに“共鳴しやすい”人間がいるのかと。
普段私達が目にする共鳴、最初は誰でもその共鳴が具現化する。具現化する、と聞くとそれは熟練の証と思う者も居るかもしれないが実際は逆。
共鳴の素質ある者は訓練を経て制御を習得する。
本来、共鳴は戦場や警備の時に使われるものだ。その時、共鳴で属性が具現化するとどうなるか。
答えは簡単だろう。敵にバレる。
コレはかなり痛手だ。わざと共鳴の具現化を見せ囮として使うこともあるが、それはごく一部。そんなことをする者は兵を駒としか見ていない独裁者だけなのだから。基本的に騎士になる者は仲間意識が強い。独裁しようとでもすれば怒り狂う騎士が反逆する恐れだってあるのだ。
ところで《共鳴》はしやすい人間としにくい人間に別れる。どちらも共鳴出来るものの扱いの差がでる。
見分ける方法、それは最初の具現化の大きさ。
大きければしやすい人間、小さければしにくい人間。元々持つポテンシャルが関係する故かしやすい人間は騎士団に入るとみるみる出世する。
認めたくは無いが、ドルフも“しやすい人間”側だ。だからトーハ様の護衛が務められる。リシュール様は“しやすい人間”。全てを御自分でお出来になられる。しかし、トーハ様は“しにくい人間”。全てを御自分でなさるには些か厳しい。
だからトーハ様の護衛、従者には優秀な者が置かれる。トーハ様の習得、上達に繋がるように。
そしてコウタも。“しやすい人間”。だが彼はもっと規格外だった。
なんだあの火柱は。
私の騎士人生でも見たことがないほどの大きさだった。
コウタは本当に魔法初心者なのか?異世界だからというのかは知らんが、コウタがこれから好奇の目で見られることは確実だろう。
守るものがまた増えたな。
そう感じながらも私の唇が釣り上がるのが分かった。
_
ワーニンワーニン。問題が発生しましたー。
なんでだろうね。
フィール「………まさか全ての共鳴持ちとは」
上林『俺が 1番 びっくり してる』
馬鹿でかい水の渦は出来るわ、自分で出した突風で浮きかけるわ、光で目が潰れかけるわ、闇に飲まれそうになるわ…………。
上林『絶対これって珍しいよな』
フィール「間違いないな……ま、何はともあれリシュール様達の元へ戻ろうか」
上林『あ、そういやここ何処よ。転移魔法で飛ばされたんだけど』
フィール「白騎士寮の訓練所のひとつだな。恐らく飛ばしやすかったのだろう。魔力が濃い」
上林『そッスか………』
魔力が濃いとは。
よく分からないが先ずは報告だよな〜、あれ、でも王子達も分かってるのかなー。なんて思ってたらヒョイって抱き上げられて転移しました。
既視感しかないね。
まさかの俺TUEEEE展開のフラグが立つ上林。だが困難は続く。
だって彼の具現化の大きさは規格外だから。それを制御するのにだって時間がかかる。
そうなるとドルフさん強いなー、リシュも強いなー。
次回『多分順序違う』
お楽しみに












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!