──最近この街に来たばかりで、ダーマーさんに案内してもらっているところです。
そう彼女に言われて、僕はつい笑ってしまった。
なぜって、あのダーマーさんが新規住人を連れて、街の案内をするなんてことがあるのかと、驚きを越して面白いが込み上げてきたからだ。
ダーマーさんとは、そこそこ古い付き合いの僕だから分かる。彼は、安易に人と関わらず、特徴のない人材は目にも入れない人だ。
だから、特徴のない彼女となぜ一緒に行動しているのか疑問だった。
予想だが、僕の考えが違うというより彼女の存在が異例なのだろう。
もしかすれば、ダーマーさんはあなたの下の名前ちゃんに脅されているだとか、弱みを握られているだとか、そんなことも考えられる。
しかし、こうしっくりこない。そう考える以前に、それは有り得るのか?と疑問に思う。
この違和感はきっと、彼女がただの一般人にしか見えないことにあると思った。
もしくは、お互いを想い想っている。
いつから、どうして、理由は──?
やれやれと、なぜか呆れ顔で返された。ほんまアキは心配症やなあ。
チリンと来客の知らせが届き、一度考え事をシャットダウンさせた。まずは目の前のお客さんのことに集中することにしよう。
頭の中をぐちゃぐちゃにされた気分だった。
そういうのは、隠さなくていいのかと心配にもなった。だがウェスカーさんは、私を真剣に見据えた。
固まって動かない私の隣で、ダーマーさんがため息をつく。
二人の会話を聞き流す。
数秒が経ち、ようやく冷静になってきた。目の前にはボスを名乗るウェスカーさんが、私から目を逸らさず見ていた。
どうしてそんなに私を見ているのだろう。自己紹介をしてもなお、ウェスカーさんの警戒心は解かれない。
それもそうか。急にダーマーさんの隣に現れた女を、怪しいと思っているに違いない。
自己紹介に返事を返さないと失礼かと思い、威圧感でつっかかる言葉を何とか吐き出した。
ダーマーは少し不貞腐れた様子で、ウェスカーに尋ねた。
突然視界が遮られる。何かと思えばダーマーさんが、私とウェスカーさんの間に割って入ったのだ。
ダーマーさんを挟んで聞いているせいか、声が籠って聞こえる。
──だけど
ウェスカーさんは続けて言った。
体が反射的に身構えた。だってその答えは、私とダーマーさんしか知らない、あの5日間が関係しているから。
しかし、私はダーマーさんの何が変わったか分からない。きっと私より、ずっとダーマーさんを見てきた人が感じ取れる変化なのだろう。
実に、付き合いというのは恐ろしい。長ければ長いほど、相手の変化や与えられた影響をすぐに違和感として感じさせる。
ウェスカーは「へぇ〜」と余裕ありげに反応した。
ウェスカーさんはそのまま、自身が乗って来た車へ引き返し運転席を開けた。
その一瞬、サングラスの隙間から視線だけがこちらを刺してきた。見間違いじゃない、きっと意図して彼はこちらを見た。彼はスモークガラス付きの車に乗り込み、その場から去っていってしまった。
生気のない笑いが出てしまった。怖くて魂が抜けたようだった。
こちらに向き直し、頭を撫でられながら言われた。
ダーマー額に手を当てて唸った。
できるだけダーマーさんには気を使って欲しくない。そう思っていたのだが中々上手くいかないものだ。
とりあえず、話題を変えてみよう。と言う私だが、正直ダーマーさんの部下の方々にも会ってみたいと思い、言ってみた。
今回は突然のことで心の準備もままならなかったが、きっと次は余裕を持てるはずだ。
そう微笑みかけると、ダーマーさんも返してくれた。この柔らかい笑みが私は好きなのだ。あの日から、ずっと。
ウェスカーさんの次は、部下の人達と会うことになるだろう。ヴァイオレッドフィズでヘラシギさんに作って貰ったドリンクを飲んでリラックスする。
今日はいつもより長い一日になりそうだ。
目覚めたら元同居人に遭遇しました【van】
Episode.3【Day1】続
こんばんは、さささ塔です。読んでいただきありがとうございます。ストーリーって難しいです。
そして補足ですが、主人公はダーマーさんのことをギャングやマフィアとは認識しておらず、どこかの偉い社長、上司と考えています。
この世界が物騒すぎるのです。そもそも異世界だしそんなこともあるよね、みたいな考えでこの数時間を生きています。
それでは次の機会にお会いしましょう。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。