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第6話

私の祈りは独りよがりだったのかもしれない
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2026/03/08 01:17 更新







 ――どうして、こんなことになったのだろう。









 夜会の華やかな光の中、私は一歩下がって見ていた。




 レティシアが、王子たちに囲まれて笑う。

 第一王子の手は彼女の腰に。
 隣国王太子は耳元で囁き、ルシアンは腕をそっと添える。

 






――甘すぎる。

 私の心が、ぎゅうっと縮む。



 こんなに愛されるべき人ではないのに。
 それでも、誰もが彼女を見ている。




 私ではなく。








 私は聖女だ。人々を救うために生まれた存在。
 奇跡の力で、多くを守ってきた。






 それなのに。








 ――どうして、私ではなく、彼女なのだろう。





 祈るだけでは足りなかった。
 私は力も立場も持っている。
 それなのに、胸の奥の不安を拭えない。

 

 どうすれば、あの溺愛の手を止められるのか。
 どうすれば、私が一番大事にされるべき存在だと気づかせられるのか。
















 ――私は、嫉妬していたのだ。

 清らかなはずの祈りが、こんなにも歪むとは思わなかった。




 だから、私は命じた。

 ――守らせろ、と。
 あの美しい令嬢の周りに、私の力で壁を作れ、と。

 短剣を持った男たちが、私の意志に従って動く。
 彼らは忠実に、命令通りに動いた。

 でも――。





 あの瞬間。

 彼女の肩に刃がかすめた。
 空気が張りつめる。



 ――私は、なにをしてしまったのだろう。







 胸が痛い。
 この胸の痛みは、嫉妬の代償か、それとも…。





 王子たちの怒り。
 ルシアンの瞳の冷たさ。
 エドワルドの守る決意。

 すべて私に向けられている。



 私が招いたのだ。















 でも、私も傷ついていたのだ。

 誰にも言えないけれど。

 誰よりも孤独で、誰よりも不安で、

 自分を必要としてくれる存在を渇望していた。

 









――救うべきは、私ではなかったのか。
 私は、誰を守ろうとしていたのか。






 祈りの声が、宙に消える。















 それは、祝福ではなく、独りよがりの願いだったのかもしれない。















 でも、後悔はしない。


















 ――彼女を、見守る。
 それしかできないとしても。



















 胸の奥の嫉妬を握りしめながら、私は静かに息を吐く。













 この夜、私は初めて知った。







 ――愛は、祈りだけでは救えないことを。

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