――どうして、こんなことになったのだろう。
夜会の華やかな光の中、私は一歩下がって見ていた。
レティシアが、王子たちに囲まれて笑う。
第一王子の手は彼女の腰に。
隣国王太子は耳元で囁き、ルシアンは腕をそっと添える。
――甘すぎる。
私の心が、ぎゅうっと縮む。
こんなに愛されるべき人ではないのに。
それでも、誰もが彼女を見ている。
私ではなく。
私は聖女だ。人々を救うために生まれた存在。
奇跡の力で、多くを守ってきた。
それなのに。
――どうして、私ではなく、彼女なのだろう。
祈るだけでは足りなかった。
私は力も立場も持っている。
それなのに、胸の奥の不安を拭えない。
どうすれば、あの溺愛の手を止められるのか。
どうすれば、私が一番大事にされるべき存在だと気づかせられるのか。
――私は、嫉妬していたのだ。
清らかなはずの祈りが、こんなにも歪むとは思わなかった。
だから、私は命じた。
――守らせろ、と。
あの美しい令嬢の周りに、私の力で壁を作れ、と。
短剣を持った男たちが、私の意志に従って動く。
彼らは忠実に、命令通りに動いた。
でも――。
あの瞬間。
彼女の肩に刃がかすめた。
空気が張りつめる。
――私は、なにをしてしまったのだろう。
胸が痛い。
この胸の痛みは、嫉妬の代償か、それとも…。
王子たちの怒り。
ルシアンの瞳の冷たさ。
エドワルドの守る決意。
すべて私に向けられている。
私が招いたのだ。
でも、私も傷ついていたのだ。
誰にも言えないけれど。
誰よりも孤独で、誰よりも不安で、
自分を必要としてくれる存在を渇望していた。
――救うべきは、私ではなかったのか。
私は、誰を守ろうとしていたのか。
祈りの声が、宙に消える。
それは、祝福ではなく、独りよがりの願いだったのかもしれない。
でも、後悔はしない。
――彼女を、見守る。
それしかできないとしても。
胸の奥の嫉妬を握りしめながら、私は静かに息を吐く。
この夜、私は初めて知った。
――愛は、祈りだけでは救えないことを。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。