ー 浅黄 美琴 ー
鼻歌が止まる
書けない
ないよ
もう時間は
無い
もっと長いと思ってた
早いよ、
早すぎるよ、
何を書けばいいの?
そんな疑問がこびり付いて離れない
こんな時は。
続く沈黙に不安を覚える
それは少し抵抗がある
つまり、書きたいということ
ありすぎて。
17年を、どうやってこの文章にまとめればいいのか。
わからない
やっぱり、らんらんはわかってるなぁ
そっか
たしかに、
これが絶対俺に届くとはわからない
なら
通話を終わる
自分に届くとは、限らないんだ
だったら少し、書きやすいかも。
こんな人間がいたんだよ、って
「 美琴 」という
一人の人間がいたんだよ、って
伝えるためならば
あんなに日を跨いで悩んだくせして
保存したのは
3 行ほどの文章だった。
でも不思議なことに
別に、伝え忘れたことは無かった
何故 3 行で、満足した文が書けたのかわからない
でも本当に
全部詰め込むことが出来たんだ
こんな人が、存在したんだ
ちょっと英語が得意で
ほかは特に冴えていない人間。
あの 3 文で伝わらない情報だけれど
別にいい
人生最後の、秘密だ。
でも悪いことをしている気はしない
いつか途切れた鼻歌を
もう一度奏でた
かかとを踏まないように
人差し指を靴にひっかけながら。
スマホで保存したログは
1度保存したら見れないんだとか。
スクショしておいてよかった
外に出て待つ君に
かじかんだ手をふる
耳だけ、暖かくなった
もしも時間が少なくても
そう考えなければいいだけなのだから
最後まで、生きていれば
望んだ死であっても
そうでなくても
その時まで生きていたという事実が
きっと認めてくれるから。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。