「なんか、他のクラスのやつらしーんだけど、冬花に一目惚れしたんだとよ。まぁあくまでも噂だかんな。そこ注意」
「う、うん。わかった」
「て・か・さ~」
そこで鈴香は意味ありげにニヤリと笑い、私の顔を下から覗き込んできた。
「冬花って好きな人いんの?」
「えっっっ・・・・・・いいいないよ」
「冬花さんよ・・・バレバレだぞ」
「うっ」
私は嘘をつくのが苦手なのだ。ポーカーフェイスが私の憧れである。
「んで?誰なのさ」
「いや、別にその・・・好きっていうか気になってるだけだけど・・・・・・あ、相沢くん・・・・・・かな・・・・・・?」
「おぉー。ま確かに、アニメとか出てきそうな美男子だよねぇ」
「ちょっと!もう少し小さい声でっ」
「おお怖。恋する乙女は鬼ですな」
「からかわないでよ!もう」
すると、近くにクラスの女子が近づいてきた。
「花宮さーん」
どうやら私に用らしい。
「隣のクラスの男子が、放課後体育館裏に来て欲しいだってー」
その言葉はクラス中に響き、クラスがざわ・・・・・・と一気に騒がしくなる。
「おぉ、どうやら噂は本当だったみたいだな」
「い、いや告白かどうか分からないじゃん!」
そう言うと鈴香はワハハと笑った。
「まぁ9割は告白なんだから。頑張ってきな」
「う、うん」
私は少し複雑だったが、ゆっくりと頷いた。
その日の放課後。
私はどこか緊張しながら体育館裏に向かっていた。
(隣のクラスの男子かぁ・・・多分、いや絶対話した事無いよね・・・・・・・・・って事は一目惚れされたって事!?いやでもまだ告白か分かんないし・・・・・・)
などと悶々としているうち、いつの間にか体育館裏の近くまで来ていた。今までに無い事で心臓がバクバクとうるさい。
深呼吸をすると、私は体育館裏の方に一歩踏み出し、驚きで固まった。
1人ではなく、4人、それもチャラチャラした感じの人達が、ちょうど私の方を見ている。
(え、隣のクラスの男子って、この人達なの!?てっきり1人だと思ってた・・・・・・っていうかなんか怖い!?)
脳内パニック状態に陥っていると、リーダー格らしい人がこっちに近づいて来た。私は驚きすぎて指1本も動かせない。
「えっと・・・・・・花宮冬花さん、だよね」
見た目に反して丁寧な口調に思わず度肝を抜かれそうになるが、慌てて口を開く。
「え、あ・・・・・・はい、そう・・・です」
するとその人は照れたような笑みを浮かべ、頭をポリポリとかいた。
「あぁ、突然呼び出してごめんね。俺が呼び出した遠藤です。遠藤悟史。それで、今日は言いたい事があって呼び出したんだけど」
向こうの3人からの視線が痛い。しかも遠藤さんがすごく私の目を見てるのが分かるから、なんか顔が上げにくい・・・・・・
「花宮さんを入学式で見て、一瞬で好きになりました。俺はもう花宮さんしか考えられません。付き合って下さい」
(う、嘘・・・・・・でしょ!?)
まさかこんな人に告白されるなんて。
「え、あ、でも、まだ私遠藤さんの事何も知らないし・・・・・・あと、ちょっと気になってる人がいるんです。ごめんなさい」
これは本心だ。申し訳なさが襲ってきたが、仕方がない。
だがそれで終わらなかった。
「おいテメェ」
声がした後ろを見ると、いつの間にか3人が移動していて、私は完璧に囲まれていた。
(あ、これ嫌な予感・・・・・・)
「遠藤の告白断るとかいい度胸してんなぁ?」
「グチグチ言わねーで付き合えよ?」
「そうしないとどうなんのか・・・・・・分かってんのか?ああ?」
怖い。怖い。怖い。
遠藤さんは断られたからなのか私を脅す3人を止める事は無かった。それで余計に付き合う気は無くなる。
でも怖い。どうしよう。どうしよう。
誰か・・・・・・・・・・・・!!
突然、後ろから引っ張られ、私はバランスを崩した。が、誰かに支えられて転倒は避けた。
引っ張った人物を見て、私は更なる驚愕に目を見開く。
相沢くんがそこにいた。
「なんだよテメー」
「俺らとやるつもりか?あ?」
「そんな事しない。ただ俺は、女子が困ってるとこ見てスルーするほどバカじゃないからさ」
「部外者は黙っとけよ」
相沢くんはその言葉を無視すると、私を無理やり引っ張って体育館裏を離れた。
「うん、この辺なら大丈夫」
「あの・・・・・・ありがとう」
「ううん、俺は普通の事しただけだから。気にしないで」
(うわぁ・・・・・・さりげなく笑ったとこもかっこいい・・・・・・)
「あ、でも」
突然、相沢くんの纏う雰囲気が一変する。
「そうだな・・・・・・せっかくだし・・・・・・」
何事かをぶつぶつと呟くと、さっきまでとは違う卑屈な笑みを浮かべて言った。
・・・・・・・・・・・・・・
「お前、今日から俺の言う事聞け」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。