第5話

第5話・初対面
212
2021/03/14 13:11
美都
美都
(不思議……)
 地図アプリを頼りに、マサヤの家へ向かう。ぼんやりする頭で美都は考えた。

 つい半年前まで、マサヤの存在すら知らなかった。

 そんな相手に、自分は今から会いに行く。自分の意思で。
美都
美都
(服、変じゃないかな?)
 白のカットソーに、黒いスカート。

 持ち物は、斜めがけの黒いショルダーバッグ。

 地味すぎただろうか?

 それよりも……。
美都
美都
(……隠してくれば、良かったかな?)
 左頬の傷に触れ、美都は思った。
地図アプリ
目的地に到着しました。
案内を終了します
美都
美都
(ここ?)
 美都は建物を見上げる。

 着いたのは、どこにでもある一人暮らし用の二階建てのアパート。

 日曜日の朝だからだろうか。人の気配は感じられなかった。
美都
美都
(でも、ちょうどいいな)
 できれば、誰にも知られたくない。

 今日、自分がマサヤに会いに来たことを。
美都
美都
(わたしが、どんなにマサヤさんを好きか……)
美都
美都
(伝えたいな?)
 再びスマホを操作すると、マサヤのアイコンを確認する。

 そして美都は、そのアイコンを撫でた。
美都
美都
本当に、綺麗……


 マサヤの部屋の前に着くと、美都はダイレクトメールを送った。
美都
美都
「着いたよ」
 インターホンを鳴らすほうが早い。けれど美都は、マサヤをより近くに感じたいと思った。
マサヤ
マサヤ
「わかった」
マサヤ
マサヤ
いらっしゃい
美都
美都
(マサヤさんの声……)
美都
美都
(嬉しい)
美都
美都
(こんなにも、近くで聞けるなんて……)
──ガチャ
マサヤ
マサヤ
君が、ミトちゃんかな?
美都
美都
……はい
美都
美都
はじめまして
 美都が右耳に髪をかけるのをマサヤはじっと眺めている。
美都
美都
(気づかれた!?)
 美都はとっさに、バッグを背に隠す。
マサヤ
マサヤ
どうぞ。あがって?
 そう言ってマサヤは背を向けた。
美都
美都
(良かった。気づいてないみたい……)
 美都はショルダーバッグから果物ナイフを取り出す。

 そして、マサヤの背中に向かって、勢いよく振り下ろした。

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