それからというもの、
練習試合の度にあの中学であなたさんの姿を探したが
一度も会うことはなかった。
たまたま部活で来ていたのだろう。
休日、時々流される彼女のストーリーは
彼女が撮ったであろう写真で埋まっていた。
何度、溜息を落としたかわからなくなったころ、
…中学3年に上がる直前くらいだ。
いつものように塾へ通う僕は、入り口で足を止めた。
…彼女が、いたのだ。
今日から入塾なのか、
うちの塾のテキストを両手で抱えながら
階段を登る姿に、思わず声をかけた。
ドキドキと逸る心臓がうるさい。
彼女に呼ばれる自分の名前は、どうしようもなく柔らかく思えた。
楽しそうにあなたが笑う。
知り合いもいないのにこの塾を選んだから不安だったんだって。
ここまで自分の興味に感謝したことはかつてないと思う。
それくらい、あの日の偶然はキラキラと輝いて見えた。
成績順に席が配置されているこの塾。
隣に座った彼女は、また楽しそうに笑った。
それから1年間。
週に3回、彼女は僕の名前を楽しそうに呼んだ。
くるくると変わる表情、僕を呼ぶ柔らかい声。
帰りの迎えを待つ間、伏せられる目元に落ちる睫毛の影。
その一瞬一瞬を逃すまいと必死に目をくるくると動かした。
それが週に5日に増え、6日に増え。
そうして、僕らは同じ高校に入学した。
これが、2つ目の偶然。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。