テヒョナルートのお話です
Page;16後のお話。
冷静に、文法書を1ページ捲る。
電話越しに彼女の震えた声が聞こえる。
僕はこの声に滅法弱かった。
なんだかこちらまで泣きたくなるような優しくて悲しい声。
ボムギュさんと何かしらあったんだろうな、と思いながら
次の言葉を待った。
あなたは人を惹きつけるところがあるからな、と思いながら
英語の文法書をまた1ページ捲った。
なんせ僕もその惹きつけられたうちの1人だ。
ず、と鼻をすすったような声が聞こえて、
心臓がぐっと押し潰されたような気分になる。
いつかこの感情は居場所をなくしてしまう。
狭く、狭くなって、いつかは。
強がってばかりの親友へ、冗談半分で声をかけた。
てひょな、と弱々しくあなたが僕の名前を呼ぶ。
だから、僕はその声に滅法弱いんだ。
ガタ、と音を立てて椅子から立ち上がる。
そのまま流れるようにコートを手にとって、
家のドアを思いっきり開けた。
鍵を閉めたら、すぐに自転車で走り出す。
電話を繋いだまま胸ポケットに差し込んだスマホと、
ポケットの中で音を鳴らす鍵。
寒さなんて気にならないほど、汗すら首筋を辿るほど。
頬に打ちつける雪。
信号待ちの間、ふと隣家の庭が目に留まる。
白の中に埋もれる赤。
…椿かな。
降り積もる雪の中赤々と燃える椿は、僕の背中をそっと押した。
赤が青になって、また僕はペダルに足をかける。
もうすぐ、もうすぐ。
駐車場に見慣れた姿を見て、緩やかにスピードを落とした。
ぶわり、と涙を一気に目を貯めて、
それを我慢するように唇を噛むあなた。
瞬きを一度すればそれはあっという間にこぼれ落ちて、
そうして雪の中に溶けていく。
人差し指を伸ばして真っ赤な頬に伝う涙を拭って、
両手をあなたの頬へぴったりとつけた。
首に回ってきた腕を受け止めるように、あなたの背中に手を回す。
少し頭を傾けて思いっきり抱きしめれば
いつものバニラが僕の思考を乱していく。
今日だけは、お願い。
口から溢れた言葉が、彼女の思考を、動きを、ぴたりと止める。
かわいいなあ、ほんとに。
今日くらいは、僕を見て。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。