第34話

Page;32:スピンオフ03『If I were』
909
2025/03/15 09:00 更新
テヒョナルートのお話です
Page;16後のお話。
Ü
テヒョナ



冷静に、文法書を1ページ捲る。



電話越しに彼女の震えた声が聞こえる。

僕はこの声に滅法弱かった。



なんだかこちらまで泣きたくなるような優しくて悲しい声。



ボムギュさんと何かしらあったんだろうな、と思いながら
次の言葉を待った。


Ü
…ちゃんと、さよならした
Taehyun;
Taehyun;
それでよかったの、
Ü
うん、…もう会うこともないし
Taehyun;
Taehyun;
…ならいいけど




あなたは人を惹きつけるところがあるからな、と思いながら
英語の文法書をまた1ページ捲った。



なんせ僕もその惹きつけられたうちの1人だ。



ず、と鼻をすすったような声が聞こえて、
心臓がぐっと押し潰されたような気分になる。

いつかこの感情は居場所をなくしてしまう。

狭く、狭くなって、いつかは。


Taehyun;
Taehyun;
やっぱ泣いてんじゃん、会いに行くよ



強がってばかりの親友へ、冗談半分で声をかけた。

てひょな、と弱々しくあなたが僕の名前を呼ぶ。



だから、僕はその声に滅法弱いんだ。


Ü
…あいにきて…っ…
Taehyun;
Taehyun;
…っ、
Taehyun;
Taehyun;
電話、っ、繋いだままにしてて



ガタ、と音を立てて椅子から立ち上がる。



そのまま流れるようにコートを手にとって、
家のドアを思いっきり開けた。

鍵を閉めたら、すぐに自転車で走り出す。

電話を繋いだまま胸ポケットに差し込んだスマホと、
ポケットの中で音を鳴らす鍵。



寒さなんて気にならないほど、汗すら首筋を辿るほど。



頬に打ちつける雪。


Taehyun;
Taehyun;
…あなた
Ü
…ん
Taehyun;
Taehyun;
…今、あなたの家の近くの信号
Taehyun;
Taehyun;
もうちょっとだけ待てる?
Ü
…うん、ありがとう…



信号待ちの間、ふと隣家の庭が目に留まる。

白の中に埋もれる赤。

…椿かな。



降り積もる雪の中赤々と燃える椿は、僕の背中をそっと押した。

赤が青になって、また僕はペダルに足をかける。



もうすぐ、もうすぐ。



駐車場に見慣れた姿を見て、緩やかにスピードを落とした。


Taehyun;
Taehyun;
…お待たせ
Ü
…全然待ってないよ、笑
Taehyun;
Taehyun;
めちゃくちゃ急いで来たもん
Ü
…ありがとう、テヒョナ
Taehyun;
Taehyun;
…いいえ、
Taehyun;
Taehyun;
あなたがすぐに頼れる距離に僕がいてよかった
Ü
…っ、てひょなっ…



ぶわり、と涙を一気に目を貯めて、
それを我慢するように唇を噛むあなた。

瞬きを一度すればそれはあっという間にこぼれ落ちて、
そうして雪の中に溶けていく。



人差し指を伸ばして真っ赤な頬に伝う涙を拭って、
両手をあなたの頬へぴったりとつけた。


Ü
…つべたい…
Taehyun;
Taehyun;
…っん、ふふ、つめたいね
Taehyun;
Taehyun;
…我慢しないで
Taehyun;
Taehyun;
泣いたっていいよ、全部受け止めてあげる
Ü
…〜っ、…う〜…



首に回ってきた腕を受け止めるように、あなたの背中に手を回す。

少し頭を傾けて思いっきり抱きしめれば
いつものバニラが僕の思考を乱していく。

今日だけは、お願い。


Taehyun;
Taehyun;
僕じゃだめかな




口から溢れた言葉が、彼女の思考を、動きを、ぴたりと止める。



かわいいなあ、ほんとに。


Taehyun;
Taehyun;
あなたが好き
Ü
…っえ、…えっ?



今日くらいは、僕を見て。

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