高校2年生のときは違うクラスだった。
同じ学校、違う科の男子とあなたが付き合ったと風の噂で聞いた。
陸上部のその男子は
どんな人に聞いても“優しくて親切でいい人”と
答えられるほどの人柄で、
嫉妬しながらもあなたは前を向けたんだな、と安心した。
なのに、あなたと彼はその年の冬には別れたらしい。
理由は詳しく聞けなかったけれど、どこか安心していた僕がいた。
階が上下だったためあまり会う機会はなかったけれど、
それでも僕らは連絡を頻繁に取り合った。
そして、高校3年生。
4度目の偶然。
心の底から嬉しそうに笑うあなたの頭を数回
ぽんぽんと叩いて教室へ入る。
2年生の間伸ばしていたらしい、
あなたの髪がふわっとバニラの香りをさせて僕は頬を緩めた。
中学ではどれだけ望んでもありえなかった。
これから全てのイベントに最後の、が付く。
そんな最後を、あなたと過ごせるのだ。
嬉しいね、と同調して適当な席につけば、
隣に座ったあなたが楽しそうに頬杖をついた。
…まだ、あのことは聞けていなかった。
そして、僕も。
あなたへの気持ちを言えずにいたのだ。
毎年距離感が近いことでお馴染みのお楽しみリレー。
何が大丈夫だ、おたんこなす。
今更やめる、なんて言い出せず腹を括った。
今年も、あなたに振り回される1年になりそうだ。
あなたの空気感が変わったことに気づいたのは、年末の模試。
休み時間中、ぼうっと前を見据えるあなたは、
僕にだけ分かるような甘い雰囲気を出していた。
その視線を目で追って、息を呑む。
…ああ、あの人だ。
あなたが何を考えて、
どんな気持ちでいるかは僕にはわからなかった。
こんなにそばにいたのに、結局理解できていない。
悔しい。
ここまで、あなたを振り回せるのか、あの人は。
そう思いながらも、
あなたが話してくれるまでは待とうと思っていた。
蓋を開ければ、彼らの話は僕なんかが入る隙がないほど
羨ましい話だった。
泣きながらあなたが必死に言葉を繋ぐのを見て、
羨ましいだとか思う。
親友だから、言えない。
好きだから、これ以上悩ませたくなかった。
悔しかったけど、それ以上にほっとしたんだ。
ずっと何かを抱えたまま笑う彼女に、やっと気付けた。
僕が気づけなかった、瞳の奥の揺れ。
それは、ボムギュさんとあなたのお揃いの傷だったんだね。
言えない、言わない。
駆け出していったあなたのバニラの残り香が鼻を掠めた。
1人、教室に残ってあなたの机に伏せれば、涙が溢れる。
なんて、今更言ってやらない。
僕の大事な、あなたへ。
幸せになってよ
ばーか。
-スピンオフ01『僕はいつかこの恋を後悔する』end-













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!