第2話

一話 もう一人の「神」と「王」の存在
13
2024/04/06 09:36
「全能の神」トールと「幻影ドッペル・ゲンガー」に殺され、「転生」してきた朔間剛史サクマ・ツヨシが旅立ってから一週間。
しかしサクマは特に何の進展も得られず、トールはあきれたように大きくため息をつき、
トール
トール
はぁ…そんなんで
幻影やつに勝つ気でいるのか?
馬鹿馬鹿ばかばかしい。大体、基本的な戦い方はともかく貴様は考えなしに体が動くタイプか?戦闘経験がなさ過ぎる。それと貴様のような弱者には到底、足下あしもとにも及ばない
だろう。我を超えることも不可能だ。
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
そんな事言ったって、この世界に来てからまだ一週間しか経ってないし、どう戦って、どう強くなれば良いのか、サッパリ…
トールはカチンと頭に来たが、あくまで平静を装いつつ震えた声で言った。
トール
トール
恥を知れ、ド素人が…。貴様には我の「全能の力」を与えたではないか。それなのに何故なぜ強くならない、強くなろうとしないのだ…。
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
い、いきなり「権能」だの能力チカラだの渡されても・・・!!そんな物今までずっと、本当に「ある」とは思ってなかったし、いきなり能力を手にしたって、使い方がわからなければな…
そう。サクマがいつまで経っても強くならない理由。それがこれだ。何でも、転生していきなり「力」を授かった所で使い方がわからないらしい。
だが、そんな事はもうとっくに知っていた。何故なら、前にも今日と「全く同じ事」を説明していたからだ。
トール
トール
何度も言わせるな。馬鹿が。「その能力チカラは貴様が思い描いた通りに出来る」って何度も言っているはずだが、これでも出来ないようなら単純に「想像力不足」って事だな。我の力を甘く見るでないぞ?「想像しただけで何でも出来てしまう」のだからな。
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
想像力不足?何だそれ。それじゃ、俺が
馬鹿みたいじゃねぇか。
トール
トール
さっきからそう言っているだろ?
全く仕方ない奴だ、貴様は。
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
とか言って、そもそも「何を」想像イメージすればいいか、なんて急に言われて出てくるわけないんだけど…。
と、ぼやくサクマに対し、
トールは思いついたように言う。
トール
トール
わかった。どうしてもわからないと言うのなら、我が貴様の脳に直接教えてやろうではないか!!
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
・・ッ!!教えるって、何を教えるんだ?
大体、お前の事なんかまだ信じられねぇ。
けど、力が身につくなら…仮に強くなれるってんなら、やってやるッ!!俺も、いつまでも現在いまのままじゃ嫌だからな!
そう叫ぶサクマの眼は、決意を硬めたように、
ぐにかがやいていた。まるで、
走り出すかのように。強くなろうとする意思を、その瞳に強く感じた。
トール
トール
よし、出番だ。
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
?・・・・・
トールは自分と反対方向を向き、すなわち、背中側、、、を向き、「誰か、、」を呼ぶ。その「誰か」は「次」の合図を待っているように、今にも飛び出しそうな地面スレスレ、、、、、、の前傾姿勢で待機している。
右足を軸にして左足を引き、腰をひねって五◯メートル走の構えを取る。更に次の合図を掛ける。
トール
トール
ワルキューレ!!
途端、トールの遥か後方から物凄い勢いで何かが突っ込んできた。いや、「誰か」と言った方が正確だ。その「誰か」は地面につきそうな勢いで水平にける。右手は胸の前で拳を握り、左手は腰辺りで風を切る役目をになっていた。まるでロケットか弾丸か、ミサイルのごとく飛んで来た「誰か」は、あおく輝く光線を引いて、そのまま高く飛び上がり、前方にくるくると二回転半して、垂直に着地。
ズザーーッ!という音と共に、土砂どしゃや石を跳ね上げ、徐々にブレーキを掛けて停止した。その「誰か」、ワルキューレは転生者、サクマ・ツヨシを鋭い眼差まなざしで見続けた。
ワルキューレ
ワルキューレ
トール。私を呼んだ、と言う事は・・・
トール
トール
ああ、強くなりたい奴がいるみたいだ。
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
?えーと、トールさん・・・・・?
お前が教えてくれるんじゃないのかよ?
ほうけたようにそうつぶやくサクマに右手の人差し指を指して、トールは呆れたように言った。
トール
トール
誰がお前に勝ち方を教えると言った。我が貴様に教えてやる事は、イメージの仕方だけだ。「勝つ」イメージなら、「彼女」から学べ。
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
ん、「彼女」?お前が教えてくれるんじゃないのか⁉
トール
トール
ああ、我と同じ「神」だ。彼女は・・・
ワルキューレ
ワルキューレ
ワルキューレと申します。
トール
トール
ワルキューレは「戦いの神」だ。貴様の脳に直接叩き込んで教えてくれるらしい。
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
?どういうことだ。ワルキューレとか言ったな?お前が何を教えてくれるかはわからないが、相手が女だからって手は抜かないぜ!!
ワルキューレ
ワルキューレ
そう。それは楽しみですわ!・・・
でも、・・言ったからには全力でかかってきなさい!!・・それと、貴方あなたさっき、私に向かって「お前」とか仰いましたよね?
デリカシーの欠片も無いですけど〜やめてくださりますか〜?
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
んなッ!そんな事言ったって、前の世界では、恋愛とか・・えっと・・・何だ。そういうのは皆無だったからよく判らなくて・・・もし違ってたらごめん。俺が悪かった。死ぬまで童貞だったんでね。彼女もいなかったんだ。
ワルキューレ
ワルキューレ
それは言い訳か何かですか?ふふ・・まぁいいですよ。その代わり、今度はきちんと知る努力をする事!いい!?
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
ああ、もちろん!!それじゃ、よろしくお願いします!!
ワルキューレ
ワルキューレ
わかりました。行きます!!!
サクマは強くなるため、ワルキューレに稽古をつけてもらっていた。剣や拳の振り方、蹴り方や基本的な動き方など、戦闘にけるあらゆる「基礎」を叩き込んでくれていた。この世界に於いて無力なサクマにとっては、大きな体験となった。
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
おおおおッ!!!
ガキン!と、金属同士がぶつかり合い、衝撃音を響かせる。サクマは剣を構え、中段左に薙ぎ払い、斜め右下から切り上げ、斜め左上に向かって斬りつける。剣を上段に構え頭から振りかぶり、真っ直ぐに振り下ろして一閃する。が、しかし
ワルキューレには一撃も通用しなかった、、、、、、、、、、かすきずすら、付いていなかったのだ。もしかして、これも「権能」の力なのか?と思った時、ワルキューレは言った。
ワルキューレ
ワルキューレ
私の「権能」は、「視界に入った相手の動き」を先読みすることが出来る力を持ちます。サクマさん、貴方は先程までよりは確実に強くなってます。動きも、太刀筋も良くなってます。ですが、"私達”を超えない限り、「王」を倒す事など不可能です!!
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
ワルキューレ・・その、"私達”って何?それと、「王」って言うのは?
ふと疑問に感じ、質問してみる。ワルキューレが口に出した「"私達”」と言う言葉。私”達"と言う事は、他にも「神」がいる。と言う事なのだろうか?そして、「王」と言う存在。それが具体的に「"何の王”」なのかが解らない。
そしてワルキューレは答える。
ワルキューレ
ワルキューレ
はい、「私達」と言うのは、貴方もすでに判っているかもしれませんが、「私」や「トール」など、様々な能力を持った神々がまだいます。そして。その数は。ーーあと、18人です。「王」と言うのは、「この世界をべる王」の事です。もしかしたら、
サクマさんが死ぬ前の世界では、ゲームや漫画やアニメで「王」と言う言葉を見たり聞いたりした事があるはず。私が言う「王」というのはまさにそれなんです。
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
で、その「王」というのに勝つには、どうしたらいいんだ?
そして、サクマは「王」について聞いた。
しかし、ワルキューレの口から出た「王」の人物像はサクマのイメージとは真逆だった。
ワルキューレは、
ワルキューレ
ワルキューレ
「王」はこの世界を総べる存在。しかし、その「王座」の裏で、「世界征服」を目論みこの世界を支配しようとしているのです。
と、眉間みけんしわを寄せ、苛立いらだちを感じさせるような表情で告げた。その一言がサクマの心に、魂に熱く燃える炎を灯した。
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
決めたぞ。俺、強くなってその「王」って奴をブッ倒してやる!!だから、もう立ち止まったりなんかしない。ワルキューレ、もし俺が危なくて、また死にそうになったら、君が俺を助けろ!そして、君が危ない目に遭わされたら、俺が君を助ける!!
ワルキューレ
ワルキューレ
ふふ・・頼もしいわね。では、お言葉に甘えさせて貰いますわ。サクマさん、貴方が困った時は私がすぐに駆けつけます!また・・・、付き合ってくださいね!
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
朔間剛史(サクマ・ツヨシ)
ああ、ってかここから先は一緒に来ないか?ワルキューレ、君の力が必要なんだ。俺は必ず、「王」を倒す!
ワルキューレ
ワルキューレ
ええ、喜んで動向いたしますわ!では、私の「権能」貴方に授けましょう!これからは共に「世界の王」に立ち向かうのです!!
こうして、ワルキューレを新たに仲間に迎え、改めて「世界の王」を倒す事を目指して、サクマは再出発した。そして、この世界のまだ見ぬ道の先で、残り18人の神々と出逢う事になる。

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