第96話

寄り添う。《番外編》
244
2021/01/11 23:00
いつからだろうか。
宇髄天元
宇髄天元
よう、尼宮
貴女
貴女
……
宇髄天元
宇髄天元
つれねぇなぁ、同期だぜ?俺ら
貴女
貴女
たまたま入隊した時期が同じだけだろう
宇髄天元
宇髄天元
それを同期ってんだよ
俺がこの尼宮あなたに好意を抱くようになったのは。
男だったとしても、俺はこいつを好きになった。
だいたいの連中はこの気持ちを"好き"だと認めないのかもしれねぇが、俺は普通に受け入れる。
嫁が三人もいるんだ、分かるし何とも思わねぇよ。
出会った当初は、本当に人間か?なんて思った。
宇髄天元
宇髄天元
お前が尼宮あなたか、よろしくな
貴女
貴女
……
宇髄天元
宇髄天元
産屋敷耀哉
産屋敷耀哉
すまないね、天元。この子はここに来るまでの間に、色々あって……。とても優しい子だから、仲良くしてやってね
御館様がそう話している内に、どっか行っちまった。
産屋敷耀哉
産屋敷耀哉
ああ、あなたは任務だったね。気をつけて
話しかけてはみたが、尽く無視される日々。
いつから変わり始めたのか、俺はわかってる。
不死川と出会った日からだ。
俺が出来なかったことを、アイツは簡単にやってのけた。
正直羨ましかったよ。
でも、それ以上に人間らしくなっていく尼宮をみて、嬉しかった。
言動にも、表情にも人間味が出てきた。
俺はそれだけで十分だ。
散々嫌がられながらも、俺は話しかけまくった。
宇髄天元
宇髄天元
よう、あなた
貴女
貴女
……
宇髄天元
宇髄天元
なんだ?別に名前呼びでもいいだろ?甘露寺だってお前を名前呼びにすんだしよ
貴女
貴女
……好きにしろ
宇髄天元
宇髄天元
ああ、好きに呼ばせてもらうぜ
不死川にいい刺激になるかもだしな。
そしたら案の定呼び止められた。
不死川実弥
不死川実弥
おい、宇髄。お前、尼宮と仲良いのか
宇髄天元
宇髄天元
あ?
仲良いのかって、聞き方。
今でも面白いな。
不死川実弥
不死川実弥
どうなんだよ
宇髄天元
宇髄天元
まあ、一応同期だしな。仲良いぜ
不死川実弥
不死川実弥
……そうか
宇髄天元
宇髄天元
けどまあ
不死川実弥
不死川実弥
宇髄天元
宇髄天元
俺にはできなかったが、お前らな出来んだろ。不死川
不死川実弥
不死川実弥
はあ?
お前ならきっと、アイツをちゃんと人間に出来るよ。
宇髄天元
宇髄天元
頼んだぜ、そりゃもう派手派手にな
不死川実弥
不死川実弥
訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇぞ
宇髄天元
宇髄天元
あ?ま、そのうち分かるよ
悔しいけどな。
宇髄天元
宇髄天元
よーう、元気か?あなた
貴女
貴女
今度は宇髄か。暇なのか、揃いも揃って
今回の任務で派手にボロボロになって帰ってきたあなたは、どこか清々しい感じがした。
宇髄天元
宇髄天元
いいじゃねぇか、お前が心配なんだよ。みんな
貴女
貴女
そうか
宇髄天元
宇髄天元
……んで?なんかイイもん得られたか?
貴女
貴女
…そうだな…、今まで感じたことの無い経験をした…
宇髄天元
宇髄天元
ほー?
貴女
貴女
でもそれはきっと、不死川といれば分かるんだ…。そう、確信している。私は…不死川に特別な感情を抱いているのかもしれない…それを知りたいんだ…
あってるよ、ど真ん中だ。
俺は乱暴にあなたの頭を撫でる。
貴女
貴女
痛いぞ、宇髄
宇髄天元
宇髄天元
それでいい
貴女
貴女
宇髄天元
宇髄天元
少しずつ知ってけばいい、いいな?
貴女
貴女
…ああ
全ての戦いが終わって数年後。
宇髄天元
宇髄天元
よう、お二人さんお揃いで
貴女
貴女
元気そうだな、宇髄
不死川実弥
不死川実弥
けっ
宇髄天元
宇髄天元
これから墓参りか?
貴女
貴女
ああ
片腕のないあなたに寄り添うように不死川がいた。
宇髄天元
宇髄天元
不死川は相変わらず、あなたが大好きみてぇだな?
不死川実弥
不死川実弥
るせぇ
貴女
貴女
宇隨、今は私も不死川だ
宇髄天元
宇髄天元
おっと、そうだったな
微笑んだあなたを見て、
嗚呼…不死川に頼んでよかった、そう思えている。
宇髄天元
宇髄天元
しばらく歩くだろ?少し休んでけ
貴女
貴女
いや、挨拶したかっただけだ。もう行く
宇髄天元
宇髄天元
そうか
不死川実弥
不死川実弥
行くぞ
貴女
貴女
ああ
歩き出した2人に伝えたいことがあった。
宇髄天元
宇髄天元
幸せにな
不死川実弥
不死川実弥
たりめぇだ
貴女
貴女
ありがとう
あの2人なら、大丈夫か。
寄り添う2人を見送りながら、俺は煙管を吹いた。


〜完〜

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