いつからだろうか。
俺がこの尼宮あなたに好意を抱くようになったのは。
男だったとしても、俺はこいつを好きになった。
だいたいの連中はこの気持ちを"好き"だと認めないのかもしれねぇが、俺は普通に受け入れる。
嫁が三人もいるんだ、分かるし何とも思わねぇよ。
出会った当初は、本当に人間か?なんて思った。
御館様がそう話している内に、どっか行っちまった。
話しかけてはみたが、尽く無視される日々。
いつから変わり始めたのか、俺はわかってる。
不死川と出会った日からだ。
俺が出来なかったことを、アイツは簡単にやってのけた。
正直羨ましかったよ。
でも、それ以上に人間らしくなっていく尼宮をみて、嬉しかった。
言動にも、表情にも人間味が出てきた。
俺はそれだけで十分だ。
散々嫌がられながらも、俺は話しかけまくった。
不死川にいい刺激になるかもだしな。
そしたら案の定呼び止められた。
仲良いのかって、聞き方。
今でも面白いな。
お前ならきっと、アイツをちゃんと人間に出来るよ。
悔しいけどな。
今回の任務で派手にボロボロになって帰ってきたあなたは、どこか清々しい感じがした。
あってるよ、ど真ん中だ。
俺は乱暴にあなたの頭を撫でる。
全ての戦いが終わって数年後。
片腕のないあなたに寄り添うように不死川がいた。
微笑んだあなたを見て、
嗚呼…不死川に頼んでよかった、そう思えている。
歩き出した2人に伝えたいことがあった。
あの2人なら、大丈夫か。
寄り添う2人を見送りながら、俺は煙管を吹いた。
〜完〜
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。