駿佑side
居心地の良い振動を感じて目が覚めた。
あれ、車の中…?
そういえば体育のとき、倒れて…それで……。
丈一郎
「あ、起きた?」
駿佑
「じょおにぃ…なんで…?」
丈一郎
「んー?学校から電話かかってきてん」
駿佑
「そう…」
丈一郎
「みんな駿が倒れたのはボールが当たったせいやと思っとるみたいやけど実際は貧血。ボールはかすりもしてないって保健室の先生が言うとったで」
ああ、だから誰かが「危ないっ!!」って…。
その声に振り返って視界が真っ暗になって、倒れたんやった。
駿佑
「あっ流にぃは?!今お家でひとり?!」
丈一郎
「後ろで寝とるよ。さすがにひとりにはできひんかったから連れてきた」
駿佑
「…そ、か」
後ろを覗くと、窓に寄りかかって目をつむっとる流にぃが。
しんどいとこ連れ出してごめん…と心のなかで謝ったとき、丈にぃに「駿?」と話しかけられた。
駿佑
「ん?」
丈一郎
「今日、朝からあんま体調良くなかったやろ」
駿佑
「…え」
丈一郎
「ごめんな。言おうとしてくれとったのにちゃんと聞けられへんかったし、学校から電話来るまで気づけへんかって…」
駿佑
「いや、俺もちゃんと言わんかったから…丈にぃのせいやないよ」
丈一郎
「駿は優しいなぁ。あ、でも今度からは俺に無理そうやったら大吾とか和也に言ってな?」
駿佑
「うんっ」
「和也はちょっと頼りないかもやけど笑」なんていたずらっぽく笑う丈にぃ。
迷惑かけてまったけど、優しさに触れられてちょっぴり嬉しくなった。
丈一郎
「今冷蔵庫にヨーグルトあるんよ」
駿佑
「えっ食べてええん?」
丈一郎
「みんなには内緒やで?笑」
クスッとふたりで笑い合った。
-終-
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。