長い長い廊下を歩きながら、マフユは次に向かう部屋を思い浮かべていた
小さく呟く
朱の部屋にはアキトとトウヤ、ビビバスの二人が閉じ込められている
マフユは少しだけ眉をひそめた
正直な感想だった
二人とも元々気が強い
だが闇堕ちによって性格が歪み、その部分が極端に増幅されている
結果……
顔を合わせる度に喧嘩、会話しても喧嘩、目が合っても喧嘩、息を吸っても喧嘩
そんな状態だった
呆れながら扉の前に立つ
そして扉を開けた
ギィィィ…………
その瞬間だった
ドォン!!
何かが凄まじい勢いで飛んできた
ビキィッ
空間が歪みマフユの身体がノイズ化する
飛んできた椅子はその身体をすり抜けた
ゴシャアアアアッ!!
後ろの壁へ激突し木片が飛び散る
無言
そして部屋の中を見る
予想通りだった
いや……予想以上だった
部屋の中は滅茶苦茶だった
机はひっくり返り本棚は倒れ床には割れたガラス、壁には拳の跡
もはや戦場だった
その中心で二人の少年が睨み合っている
両方とも額に青筋を浮かべていた
ドン!!
机を蹴飛ばす
ブチッ
何かが切れる音がした
ドゴォッ!!
アキトの拳が飛び、トウヤも殴る
バキッ!!
ゴッ!!
ドカッ!!
普通に殴り合いが始まる
見ているだけで止める気はない
というか止めても無駄だった
数時間前、洗脳された直後この二人は異能力まで使って本気で殺し合いを始めた
結果、部屋は半壊、城の壁は破損し闇ミクは大激怒
そして現在
二人の首には黒い首輪が付いている
能力封印用の首輪だった
闇ミク直々の命令である
そのため異能力は使えない
しかし、身体能力は普通に残っている
つまりただの殴り合いになるだけだった
ゴォッ!!
拳をトウヤが避ける
何だろう……
会話が成立していない
いや成立しているのかもしれない……
本人達だけは
その時
ピキッ……
アキトの頬にヒビが入る
怒りによる亀裂
そしてトウヤにも
ピキッ……
頬に黒いヒビ
互いに地雷を踏み続けている
自然に何も考えなくても……
もはや存在するだけで地雷だった
再び殴り合う
ドガッ!!
バキッ!!
ゴシャッ!!
家具が吹き飛び、壁が割れ、床が抉れる
もはや日常だった
しばらく眺める
一分……二分……三分……
マフユが出した結論は……
結論、『放置』
むしろ何もしない方が早い
マフユは踵を返した
ドゴォォォン!!
また何か壊れた
扉を閉める
ギィィィ……
なお、閉めても中から怒鳴り声は聞こえる
ドゴォン!!
バキィ!!
ガシャアアアッ!!
数秒の沈黙
そして……
本気だった……
さすがのマフユも思った
一緒にしておく意味がない
むしろ城が危険である
そう呟きながら再び暗い廊下を歩き始めた
背後ではまだ終わる気配のない怒鳴り合いが続いていた
まるで互いを傷付けることだけが存在理由になってしまったかのように
そしてその頬のヒビは喧嘩の度に少しずつ……少しずつ深くなっていくのだった















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。