四郎、柳、紮生、海頼が、Little Tigersを組んだのは、今から十年前、四郎達がまだ五歳の頃だった。

まだ幼い四郎達は、同じ地区には住んでいたものの、顔すらも知らない。

四郎、柳、紮生、海頼は、偶然にも音楽が得意だった。

四人が出会ったのは、あまりにも小さな出来事からだ。

ヤンチャの男の子が散歩をしていたら、目の前である男の子がチンピラに囲まれていた。

そこに、ヤンチャくんが助けに入った。

もちろん、大人に勝てるわけなんかなく、二人はボロボロになりながらも、なんとか逃げ切った。

公園で休憩をしているところに、また別の男の子が現れた。

怪我をした二人の男の子達を見て、その男の子は手当てをし始めた。

そこで仲良くなった三人の男の子達は、公園で遊ぶことになった。

すると、またもう一人の男の子が、一緒に遊びたくなって話しかけた。

そうして、四人が仲良くなった。

それからは、何度か四人で遊ぶようになり、その年にヒプノシスマイクが世の中に出回った。

四人は、歌が大好きだった。

だから、楽しみたいという子どもながらの純粋な気持ちで、中央区からマイクをもらい、ラップバトルを始めたのだ。

マイクを貰うと、Little Tigersというイケブクロディビジョンの代表チームとなった。

四郎のMCネームは『シルバー』とした。

五歳の四人は、まだ幼い。

だから、自分の実力がわからなかった。

テリトリーバトルで試すしかないのだ。

眩しいぐらいの笑顔をした四郎の言葉で、テリトリーバトルの出場が決まった。

それからは、ラップを上手くするために、調べたり練習したりしていた。

初めてのテリトリーバトルの日がやって来た。

四人は、話し合った。

五歳の子どもがテリトリーバトルに出たら、きっと大人は心配するだろう。

そういうことで、目と鼻だけ隠れる仮面をすることに決まった。

それで、世間に顔と本名は知られなかった。

初めてのテリトリーバトルは、Little Tigersはすぐに負けてしまった。

だが、そこから練習をして、二回のテリトリーバトルに出場。

そこでも一歩届かずに負けてしまう。

そして、ラップを始めて四回目のテリトリーバトル。

四人は、初めてのチャンピオンでテンションが上がった。

実は、Little Tigersは一回目のテリトリーバトルから、驚くほど成長していた。

始めは、初心者ってわかるほどダメダメだったのが、三年経つと、中央区がびっくりするほど上手くなっていた。

それからは、何度もチャンピオンの座を取り続けて、まるで常連のようになっていた。

初めてチャンピオンになって五年後、この日も変わらずに、客を圧倒するようなラップを披露した。

Little Tigersのラストバースで、バトルが終わった。

その一言で、会場の熱が一気に上がった。

小学六年生にして、チャンピオンを連続で取り続けた四郎達は、有名になった。

四郎は、クスクスと笑った。

それから、四人は仲良く話しながら、中央区を出て家に帰っていった。