病室は、煙草独特の煙臭さがした。
またか。
ここでは煙草は禁止のはずなのに。
けれど彼女は決まってこう言う。
『大丈夫。どうせもうすぐ死ぬんだから。』
°𖤐⸜ 𝐆𝐞𝐡𝐞𝐧𝐧𝐚 ⸝𖤐°
ベッドに座る、不健康そうな彼女に向かってルナは言う。
彼女の名前はアルという。
掠れた声で、しっかりとルナの声に反応した。
そのまま気力のない声でアルは言った。
アルは、一度もルナの方を見なかった。
淡々とした口調でアルは言う。
でも、ルナももう慣れていた。
いつだってアルはこんな感じ。
アルはこんな人なのだ。
全てを諦めていて、
何も望まず、
生きる希望なんて持っていない。
アルは少し黙り込む。
そして口を開いた。
アルは少し前に倒れた。
後が残るほど深いリストカット
過度なオーバードーズ
ストレス
たばこ
過度な飲酒
原因はいろいろある。
いろいろな悪環境が影響し、今こうなってしまってるんだろう。
言ってしまえば、自業自得なのかもしれない。
そしてあの体にはもう、回復の見込みはない。
医者に言われた。
後は死ぬだけ。
ただの生き地獄だ、とアルは思う。
自分は生きてしまってるだけ。
死にたいのに。
生きたくなんてないのに。
ただ、死ねてないだけ。
死ぬ勇気がないだけ。
だからアルは、この地獄の中で今日も生きてしまってる。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。