『今晩は!
上着!お預かりしますね!』
K「…分かった」
約束しましたよ!という圧を与えられ
上着を脱ぎ、あなたのバーでの名前に渡す。
『今日、どうします?
いつものようにコルンですか?それとも…』
K「…コルン。」
『かしこまりました。』
すっかり慣れた手つきで蒸留酒を入れる
あなたのバーでの名前の手元を無意識に眺める。
ふと、あなたのバーでの名前が声をかけてきた。
『そういえば聞いておきましたよ!
オーナーに、いろいろ。』
K「…本当か」
『はい!えっと、
名前は────で、
好きな食べ物は…………』
名前はベルモットに聞いて知っていたが、
好きな食べ物までコルンに伝えているはずがなく。
必要はないが新鮮な情報ばかり
あなたのバーでの名前は伝えてくれた。
『……と、いうことです!
あ、コルンです、どうぞ。』
K「…ありがとう」
未だに柄じゃないと思ってしまう"ありがとう"を口にし、
喋りながらも準備してくれたコルンを入れたグラスを手に取った。
K「……店……」
『え?』
K「普通は…客が店員に…するのか」
『あ、注文…のことですか?
たまにいますよ、私達に入れてくれる人は。』
ベルモットに聞いたことは本当だったようだ。
客がお酒を注文し、
それをそのままバーテンダーに譲渡する。
やると警戒は解けるわよ、と言っていた。
ベルモットが。
K「じゃあ…何がいい」
『…え?』
K「あなたのバーでの名前は、何の酒が好き、?」
あなたのバーでの名前は暫く状況が飲み込めず固まっていたが
コルンが先程の話を実践しようとしてると理解する。
『あっ…私の好きなお酒ですね!
ええと……』
彼女はしばらく考え込み、
やがてぽつりと告げた。
『…コルンですかね、』
K「…コルン?」
『飲んだことはないんですけど…
ルークさんがよくお飲みになっているので…気になって。』
そう言い、
あなたのバーでの名前はあはは、とごまかすように笑った。
K「…分かった。注文。」
『…!はい、かしこまりました。ありがとうございます……』
もっと、こういうのに慣れた客であれば
スマートにバーテンダーに譲渡するのかもしれない。
だが。
この二人には、このくらいの距離感が心地よかった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!