第6話

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2025/12/24 14:10 更新
――スンミン視点――

俺は、自分がどんなふうに見られているかを、だいたい分かっている。

優しい。
頭がいい。
感じがいい。
モテる。

そういう評価は、いつの間にか勝手についてきて、勝手に広まっていく。
期待されるのにも、距離を詰められるのにも、正直もう慣れていた。

だから、あの日。

日本から来た転校生が隣の席に座ったときも、最初は「いつも通り」だと思った。

緊張した顔。
少し硬い笑顔。
言葉を選ぶような話し方。
スンミン
スンミン
よろしく
そう言ったとき、彼女は小さく頷いて、ちゃんと目を見て
(なまえ)
あなた
よろしくお願いします
と返してきた。

その時、なぜか少しだけ、印象に残った。

――あ、この子、無理してるな。

授業中、ノートを取る手が止まるたび、分からないのに分からないって言えない顔をする。
助けを求める代わりに、黙って飲み込むタイプ。

放っておけなかった。
スンミン
スンミン
ここ、こうだよ
声をかけると、少し驚いた顔をしてから、ほっとしたように笑った。

その笑顔を見たとき、胸の奥が、ほんの少しだけ動いた。

放課後、家の方向を聞いたときも、完全に“ついで”だったはずだ。
迷わせたら可哀想だと思っただけ。

でも。

アパートの前で「隣だね」って分かった瞬間、心臓が一拍遅れた。

偶然にしては、近すぎる。

しかも、ひとり暮らし。
スンミン
スンミン
何かあったら言って
自然にそう口に出ていた。

夜、壁越しに物音がしたときも、正直迷った。
余計なお世話かもしれないし、距離を詰めすぎかもしれない。

それでも。

インターホンを押した。

ドアを開けた彼女は、少し驚いていて、それから安心したような顔をした。

――来てよかった。

棚を組み立てながら、部屋を見回す。
必要最低限の家具。
整っているけど、どこか心細い空間。
スンミン
スンミン
(一人で大丈夫かな…)
自分でも驚くくらい、本音が出た。

次の日、学校で。

俺に声をかける人は多い。
でも、隣の席にいる彼女は、静かにノートを取って、時々俺の方を見るだけだった。

周りの視線や噂に、少し疲れているのも分かる。

放課後、一緒に帰る道が、俺は好きだった。

誰にも気を使わなくていい。
無理に笑わなくていい。
ただ、隣を歩くだけ。
スンミン
スンミン
俺は……味方だから
そう言ったとき、彼女は一瞬、言葉を失った。

その反応が、胸に残った。

俺は、誰かの“特別”になるつもりなんてなかった。
でも。

隣の席で。
隣の部屋で。
静かに笑う彼女を見ていると、
スンミン
スンミン
(離れたくない)
そんな感情が、確かに芽生えていることを、もう否定できなかった。

これは、ただの優しさじゃない。
気まぐれでもない。

俺はもう、彼女を――
“隣の席の転校生”としては、見ていなかった。

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