第10話

10話⋆☾·̩͙꙳
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2024/07/11 06:22
伊黒side








たしか、初めて会ったのはあなたが12の時だった

俺が初めて御館様のお屋敷に行った時、


あなたは後ろから俺の羽織の裾を引き、

「にぃに、お口の怪我、大丈夫?」といってきたんだ




気配がしなかったことにも驚いたが



1番は








女なのに気持ち悪くならなかったことだ。





その時の俺は、女というだけで小さな子供ですら吐き気がした。







でも、あなただけは違った。










気色の悪い笑みではなく、




太陽みたいな笑顔で俺の暗い心を照らし、



吐き気がするような甘ったるい香りはどうしてか、



光風に乗ってやってくる爽やかな花のような香りで俺の心を揺さぶった。











一瞬にして目を奪われ、その香りに溺れそうになった。





そして、わかった・ ・ ・ ・んだ、”この子は大丈夫だ“ と



















その後、呆然と立ちつくしていた俺にあなたは「やっぱりまだ傷が痛むのね!?」「まって!お姉ちゃん呼んできてあげる!!」といい、瞬く間にその場からいなくなっていた









再度俺の前に現れた時、あなたの隣には穏やかな笑みを張り付けた女がいた






あなたはそいつを“しのぶ姉さん"と呼び、そいつに「にぃにのお口、いたいって!みてあげて!!」といった。


そいつはあなたを『はいはい』となだめ、俺の顔を触ろうとした。




でも、俺はまだだめだった。






女に触られることに憎悪がした。







だから、手を振り払ってしまった








あなたが信用している人なら大丈夫だと、頭ではわかっていたのに














でも、そいつは少し驚いた顔をしただけで





怒ることもせず『こんにちは。私は蟲柱の胡蝶しのぶと申します。怪我をなさっているのでは?』といった







そこで俺は初めて柱という存在を知った。




「わ、わる、い」




胡蝶は不思議そうな顔をしたあと、すぐに笑顔を張り付けて『大丈夫ですよ。』といった




「怪我はしていない。これは古傷だ。」





『そうなんですね。それならよかったです。あなたが急にごめんなさいね』といい、




『このお兄さんの傷はもう治っているから大丈夫よ。』と話しかけていた。






それを聞いたあなたは「いたくない?」と俺に心配の目を向けた。














俺はこんな純粋な子に心配されていいような人間じゃない。






そんな目で俺を見ないでくれ



















俺の血統は屑の一族だ。






屑の一族に生まれた俺もまた屑






だから、



































俺はその場から逃げた。








俺があなたの隣に立つことは許されないんだよ。





































でも、君は









君の透き通る瞳は













俺の心も見透かしていたのだろう?

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