赤い、温かい液体が俺から流れ出ていく。
俺の胸の中心を刺し貫いた氷柱を伝い、Nakamuの手を濡らしていくのが見えた。
俺はゆっくり腕を上げ、氷柱を握るNakamuの手に触れた。
氷と同じくらい冷たくて、とても人間とは思えない手だった。
神羅国総統の声が、遥か遠くから聞こえるような気がする。
そんなん、最悪に決まってるだろ。
俺が死んだら、皆が…。
「でも」この傷が致命傷なのは、誰にだって分かる。
なのに、何故だろう。
頭はひどく冷静なんだ。
俺は壊れた拳銃を床に落とした。
そして空になった手を、Nakamuの背に回す。
冷たい冷たい彼の身体を、俺はそっと抱きしめた。
朦朧とする意識の中、小さな声を絞り出す。
脚に力が入らなくなり、俺はほとんどNakamuにもたれかかる体勢になった。
…もう死にそうなやつが、何言ってるんだろうな。
自嘲しながら、俺は静かに目を閉じた。
ポツリ、と。
顔に水滴が落ちてきた。
一滴だけじゃない。
後から後から落ちてきては、俺を濡らしていく。
気力を振り絞って、僅かに目を開ける。
…雨が、降っていた。
天井があるはずなのに、どうしてだろう。
「針雨」だろうか。
また暴発した?
いや、どうやら違うみたいだ。
あんなに激しくも、冷たくもない。
優しくて、暖かい雨だった。
ふと目を落とすと、俺を貫いている氷柱が溶け始めていた。
それと同時に、ゆっくりと痛みが薄れていく。
…ああ、そっか。
俺の怪我…治りが早かったのは、「これ」があるからか。
どっかの誰かも言ってたっけ。
雨が草木や、生き物を育てる…って。
俺の、二つ目の力。
「再生」
???side
どこかわからない、暗い所。
立っているのか座っているかも分からない。
誰もいない…何も聞こえない。
俺は、どうなってるんだ…?
…?
誰か、呼んでる?
懐かしい声。
…ああ、確かに聞こえた。
「帰ろう」って、俺の名前を呼んでる。
待って、今行くよ。
俺がいないと、お前はヘタレてばっかりだからさ。
俺は深影の声に導かれるように、意識が浮上するのを感じた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。