組長との対面が終わるころには、四季の緊張はすっかりほどけていた。
先ほどまで“怖い人の部屋”だと思っていた場所は、気づけばどこよりも静かで、どこより安心できる空気に包まれていた。
組長がやさしく声をかける。
四季はぱちりと瞬きをする。
その言葉に、四季の小さな肩がきゅっと上がった。
(……みんな……?いっぱい……おとな……?)
まだ“大人=怖い”の感覚は消えていない。
四季の不安を読み取ったのか、後ろにいた真澄がそっと手を握る。
四季は少しだけ息を吸い、こくんと頷いた。
その一言で、組長は嬉しそうに穏やかに目を細めた。
本当は少し前からふらふらしていたのだが、緊張で気づかなかっただけだ。
皇后崎が四季を抱き上げる。
四季はその胸に顔をうずめながら、ぽそりと呟いた。
四人の柔らかい笑いが部屋に響いた。
***
四季の部屋に戻ると、ふかふかの布団が敷かれていた。
そこにそっと寝かされると、四季は安心したように枕をぎゅっと抱いた。
真澄が布団をかける。
京夜も優しく言う。
無陀野の声はいつもよりほんの少し低くて、落ち着いた響きがあった。
皇后崎が頭を撫でると、四季は小さく目をとじた。
まぶたが重くなる。
布団の中のぬくもりは、生まれて初めて知った“安心できる場所”だった。
(……あったかい……こわくない……)
ぎゅっと握った布団の端を離さないまま、四季はすぐにすー……っと眠りに落ちた。
その寝顔を見て、四人はそっと息を吐いた。
四人は静かに頷き合った。
四季の寝息は、まだ頼りなくて、とても小さい。
でもその小ささが愛おしくて、守りたくて、四人は部屋を後にした。
***
数時間後。
四季はゆっくりと目を開けた。
窓の外は夕方。
薄い橙色が部屋に差し込んでいる。
身体が軽い。
さっきまでの疲れが嘘みたいだった。
そこへ、静かに扉が開く。
優しい声がして、真澄が部屋に入る。
その後ろには京夜、無陀野、皇后崎の姿もあった。
四季は寝ぼけたまま、ぽつりと聞く。
四季の不安が、ゆっくりと溶けていく。
花魁坂が笑う。
皇后崎が手を差し出す。
四季はその手をぎゅっと握りしめた。
そうして、五人は夕食会場へ向かう。
大きな扉の向こうには、温かい明かりと、優しい笑い声が待っている。
(……あったかいとこ、また……いける……)
四季の小さな足は、怯えではなく、期待で前に進んだ。
そして――四季が“家族”として初めてみんなの前に立つ夜が、静かに始まろうとしていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。