俺は、走る。
かの暴虐な王に激怒してるわけじゃない。
用事があったから、急ぎの用事があったから走っているだけだ。
医務室の扉を壊れる勢いで開けて、結構デカイ声で叫ぶ。
医務担当として居座るきんときが しー と人差し指を口元経あてた。
さっき、きんときから連絡があった。
先日保護したあの子供が目を覚ましたと。
武器庫からとびだして、全力ダッシュしてきたのだ。
あの子が無事であるのを見たかったから。
きんときがカラカラとカーテンを開く。
中ではあの子が くぅくぅと眠っていた。
身体中に巻かれた包帯と左手に刺された点滴が、とても痛々しい。
俺は仕事するから、見ててくれる? と言ってきんときは俺から離れる。
俺は近くにあった椅子を引っ張ってきて、座った。
右手をそっと握る、あの時よりも暖かい。
あの時はきんときが水をぶっかけたのもあって、死んでしまうのではないかと思うぐらい冷たかった。
まだ、救い切れてない。あの地獄から助けただけで、この子自信は取り憑かれたままになる。
助けないといけない。俺がそうしてもらったように。
今ギルド内全員が忙しく働いている。
なかむはこの前の仕事の報告。
きりやんは一緒に戦ってくれた他のギルドへの挨拶。
きんときはこの子の治療。
スマイルは通信室で引きこもってるからなんかの仕事。
俺はギルド内の警備。
それはいつもの事で、これに任務が入ったり依頼がはいったりする。全員が忙しいのだ。
そんな中で俺ができることは何だろうか。
彼らは俺の時も無理矢理時間を作って色々してくれた。
じゃあ、俺がすべきことは、この子を愛することだろう。
本当の愛を知らないこの子に、愛を教えること。
暖かいご飯と暖かいベッド、子供らしく遊ぶこと、わがままを言うこと、褒められる嬉しさ、この子の知らないことを俺らが教える。
俺は気持ちよさそうに眠る彼の頭を優しく撫でた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。